予選開始
「ついにゲーム内最強の称号を得るプレイヤーを決める日がやって来ました。本日は参加プレイヤーを各16のブロックにランダムに別れてもらい、明日行われる本イベントの本選出場プレイヤーを決定します。それでは、参加プレイヤーは指定の場所に着いてください。それらの完了が確認出来次第プレイヤーの転送を開始します。」
という司会の掛け声と同時に参加プレイヤーたちが転送エリアに集まり始める。
「それじゃあ頑張るです。わんこ、鉄ちゃん。私はここでアンフェと一緒に応援してるです。」
「わんわん」
「………」
わんこと鉄ちゃんは、雫の激励を聞いた後転送エリアに向かっていった。
わんこたちが行ってから少し経つとプレイヤーたちが転移していった。
「予選のための戦闘フィールドは、4つ用意しております。そのため1つのフィールドで本日は各4戦行われます。また各会場の試合はイベント本部フィールド及び、参加プレイヤー控えフィールドで中継しております。各会場の試合を見ることが出来るようになっておりますので、ご安心してください。それでは説明ばかりでは飽きてしまうので早速各会場、第1試合を開始します。」
イベント本部フィールドの観客席から各フィールドの中継映像を見ているのは雫とアンフェは、
「うーん凄いプレイヤーの数です。これじゃわんこと鉄ちゃんが出てきたのかわからんです。」
「~♪~♪」
雫の心配は全く杞憂である。
最初に出番があったのはわんこであった。鉄ちゃん程ではないが通常のプレイヤーよりも大きな体躯により周囲からの視線を集めていた。このようなバトルロイヤルで目立つのは不利である。攻撃対象になりやすいのだ。
「第1試合全てのフィールドで決着がつきましたので第2試合を開始します。」
司会の掛け声で第2試合に出場するプレイヤーが戦闘フィールドに転移していく。わんこも戦闘フィールドに着く。今回のイベントの戦闘フィールドは、今までよりもかなり小さい。回りを見渡せばプレイヤーがたくさん見える。最後の1人になるまで隠れて待つということは出来そうにない。
「それでは第2試合の出場者全員の転送が完了しましたので予選第2試合を開始します。それでは皆さん頑張ってください。」
予選第2試合、あるフィールドでは信じられない事が起こっていた。突然プレイヤーが倒されていくのだ。
「おい、どうなってるんだ。これはスキルか、それとも魔法か?」
「知るかそんなもん。それよりもスキルでも魔法でも通常攻撃でもどれでもいいけど、それを放ってるヤツの姿が見えないぞ。どういうことだ。そんな離れた所からプレイヤーの体力を全損させる攻撃をこんな連発出来るやつなんているのか?」
そんなプレイヤーたちの会話。それをしてる間にもプレイヤーは、減ってきていた。
「ヤバイ。何も出来ずにおわ……」
どんどん減っていく。隠れることがほぼ不可能のフィールドなのに誰もこの地獄を造り出している者を見つけることが出来ていない。闇雲に攻撃を繰り出すプレイヤーも出てきて、このフィールドは騒然としていた。
フィールド内に残っているプレイヤーが最初の1割を切って来た頃、これを引き起こした者が姿を現す。
「わんわん」
可愛らしい鳴き声とこの場の現状とのギャップに言葉を失うプレイヤーが続出していった。
「さて。予選第2試合、早くも決着がついたフィールドがあります。そしてそのフィールドの勝者はわんこさんです。おめでとうございます。」
イベント本部フィールドの観客席では、第1試合に出場したプレイヤーもここに戻ってきていた。プレイヤーたちは、わんこが居たフィールドに居てしまったプレイヤーたちの冥福を祈っていた。
「おお、わんこが勝ったです。」
本選出場者が決まったのにも関わらず静まり返った観客席で雫の喜びの声は響いていた。
わんこが影魔法を活かした戦闘で勝利を手にしてから少し経ち鉄ちゃんの出番も来た。わんこが技によって敵を倒したとするなら鉄ちゃんは力により敵をなぎ倒していった。
鉄ちゃんの戦い方はシンプルであった。小鉄たちで回りを固め、基本的に遠距離攻撃で敵を倒していく。火竜を倒せないプレイヤーたちに龍を倒せる道理は無い。そのためほとんどのプレイヤーが「鉄龍砲」や「鉄龍」に沈む。
プレイヤーの中には接近戦を試みようとする者も居たいたが、元々魔法を取得するまで接近戦のみで戦っていた鉄ちゃんを倒すには至らない。
結局、鉄ちゃんの防御を越える攻撃を放てるプレイヤーがおらず、ごり押しにより倒されていき決着となった。
プレイヤーたちの最大の敗因は、鉄ちゃんの圧倒的な威圧感に負けて、団結して鉄ちゃん攻略に乗り出さなかったことであろう。さすがに鉄ちゃんも全員対鉄ちゃんでは勝ち目はなかったが、そんな構図になることはなかった。
予選を終え強烈な印象を各プレイヤーたちに植え付けたわんこと鉄ちゃんであった。




