亜人の街の先
雫とリクは、亜人の街の先にあるフィールドに向かっていた。
「あのフィールドにはたまにですけど本当に稀少な素材も採取できることがあるんですよ。」
「へー。でもやっぱりさっきの蟲使いでしたっけ、それが気になるです。」
「大丈夫ですよ。何回もそこに行ってる僕も見たことがないんですから。それはやっぱり噂ですよ。」
そう言いながら雫たちは向かっていった。
その目的のフィールドにもうすぐ着くというとき雫は違和感を感じた。
「リク、その先のフィールドにモンスターはいないって言ってたですよね。」
「はいそうですね。」
「そのフィールドに今は、誰かいるです?」
「今ですか?多分いないと思います。でもなんでそんなことを?」
「それはですね。そのフィールドに気配を感じるからです。」
そう言いながら雫はボムを構えて臨戦態勢になる。
「気を付けるですよリク。」
警戒しながらフィールド内に入る雫。そのフィールドには雫が感じたようにモンスターが居た。しかも今までに出てきたモンスターよりも大きな蜂であった。
「本当に虫が居ますね。このフィールドにモンスターが出てくるなんて初めて見ました。」
リクは驚きながらモンスターを見据えていた。それとは逆に雫は警戒を解く。しかも構えていたボムすらもしまってしまう。
「シ、シズさん。何してるんですか。モンスターですよ。」
「ああリク。大丈夫かもしれんです。あの蜂からは、敵意が感じられないです。」
雫は相手の蜂が危険ではないと判断したのだ。それと同時にフィールドの奥から声が聞こえてくる。
「そのお嬢ちゃんの言う通りだよ。そいつに君らを害する気は無い。」
奥から現れたのは、少年のような外見の男であった。
「誰です?」
「僕かい?僕はそうだね。僕のことはアドって呼んでくれよ。それよりも誰って質問は僕の方が聞きたいな。お嬢ちゃんからは、同族の匂いがするんだ。けど君は人族だろう。君を攻撃させないのもそれが気になったからだよ。」
「同族の匂いですか。」
雫は自分自身を嗅いでみるが分からなかった。
「そういう意味じゃないよ。」
「というか貴方こそどんな存在なんですか?」
とリクがアドに尋ねると、
「どんな存在か。まあ簡単に言うと樹妖精かな?」
「樹妖精。は、初めて見ました。」
リクがアドの正体に驚いているとき雫はというと。
「樹妖精?ああということはドリーと一緒です。」
「一緒?まさか樹妖精が僕以外にいるのかい?本当に?」
「そうです。多分私から感じた匂いってのは加護のことです。」
「加護。そうか樹妖精の加護を持った人族がいるとは思わなかったよ。もっと聞かせてもらえないかえーと君の名前は?」
「ああシズです。」
「そうか。よろしくねシズ。」
雫には樹妖精と仲良くなる才能があるのかすぐにアドとも仲良くなり話はどんどん弾んでいった。
「ありがとうシズ。僕も今度その第4の街のドリーに会いに行ってみるよ。」
「まあそうすればいいです。で、ここの素材は貰っていっていいですよね。」
「ああいいよ。まあ根こそぎ取ってくのはやめてほしいけどね。」
ここに来た理由であった素材も手に入れてアドに別れを告げ亜人の街に戻る。
「それじゃあ採取した素材で色々と作ってみるです。」
「そうですね。僕もお手伝いします。」
それからどんどん日が経っていく。
「やっと夏休みだねしずちゃん。」
「そうですね。さえは今日からゲームですか?」
「そうだよ。テストもやっと終わったしね。今日からイベントまではとりあえずね。」
「ちゃんと宿題もやるですよ。」
「そうだよね。面倒だな。でももうすぐイベントだからね。頑張るぞ。」
「おー。頑張るですよさえ。」
第3回イベント、最強決定戦まで約1週間となり他のプレイヤーのボルテージも上がっていった。わんこと鉄ちゃんも徐々に仕上がっていく様子であった。
「わんこ、鉄ちゃん調子はどうです。」
「わんわん」
「…………」
「まだまだだがまあ前よりもよくなってきてるぞ。」
「ふふ、そうね。魔法の発動もしっかりコントロールできるようになってるしね。これならイベントでもいい結果が出るはずだわ。」
「そうですか。楽しみです。」
イベント開始はもうすぐである。




