荊姫と爆弾娘
荊の道の先に居たのは可愛らしい女の子であった。周りを荊で囲み、誰も近づけさせないようにしていた。
「ふふ、私は荊姫。よろしくね。」
可愛らしく挨拶をしてくる女の子。見た目は可愛らしいが近づくと怪我をする。バラのような少女であった。
雫たちは荊の道を進んでいった。このフィールドの長さがそこまで長くなく、雫たちがこのフィールドに適していたため、今までで一番早くボスのフィールドにたどり着いたのだ。そこにいた荊姫を見た雫は、
「すごく可愛いです。やばいです。」
「ふふ、ありがとう。あなたも可愛いわ。」
今から戦闘をするとは思えない雰囲気であった。そして雫と荊姫はにているところがあった。雫が何もしなくても敵はわんこたちが殲滅してくれる。荊姫は、荊姫の意思とは関係なく自動で荊が戦闘を行うのだ。
「ふふ、私は誰にも触れない、誰にも触らないの。気がつくと皆、荊で穴だらけ。あなたも直ぐにそうなるわ。」
荊姫の台詞が終わると同時に無数の荊が雫たちに向かって来る。
「よし行くです鉄ちゃん。」
フィールドの荊は全く効かなかった鉄ちゃんが前に立って荊を受ける。
「...!」
「鉄ちゃん。大丈夫ですか。」
「ふふ、ごめんなさいね、そこの鉄ちゃんだったかしら。ここの荊は今までの荊とは全然違うわよ。」
龍になってさらに防御力が上がった鉄ちゃんの防御力を上回りダメージを与えてきた荊。鉄ちゃんにさらにダメージを与えようと迫る。
「わんわん」
荊だけを残し鉄ちゃんが影の中に消える。ただそれだけでは終わらない、鉄ちゃんを見失った荊は雫に向かって迫ってきた。
「はぁー。今度は私ですか。まあいいですよ、てい。」
雫は海底トンネルでは、全くと言っていいほど使わなかったマグマボムを投げつける。荊を燃やし尽くすマグマボムを見て荊姫は、
「へー。すごいのね。私驚いちゃったわ。でもね、荊は無限に生えてくるわ。私は荊姫。私から荊を奪うことは出来ないわ。」
雫のボムの威力を見ても荊姫の態度は変わらなかった。
「そうですか。少し燃えてきたです。」
雫はいつもとは違い、戦闘に積極的であった。
「鉄ちゃん、「鉄龍砲」です。小鉄も「小鉄砲」です。わっ来たです。わんこ頼むです。」
強固な荊に苦戦しながらも、遠距離から攻撃を加えていった。わんこの「影移動」で近づいての攻撃もやってみたのだが、荊は驚異的な感知能力があるようで、影から出る瞬間に荊が集中攻撃を繰り出してくるため、いつものパターンが通用しないのであった。
「ふふ、こんなに私の荊を前にしてここまで持ちこたえたのは、久しぶりね。でもそろそろね。」
「そろそろですか。何かあるです?」
荊姫の不穏な発言を聞き、疑問に思った雫は荊姫に尋ねると、
「ふふ、植物は成長するのよ。荊もね。」
その言葉通り荊が徐々に太くなっていく。そしてそれとは逆にどんどん荊のスピードが上がっていく。
「やっやば、やばいです。」
過激になっていく荊にもう避け続けることも難しくなってきた。少しずつ傷が付いていくわんこと鉄ちゃん。アンフェが回復魔法をかけてくがダメージが蓄積していく。
「ふふ、そろそろ終わりね。さようなら。」
荊姫が雫に笑いかける。それを見た雫は諦めたような溜め息を吐く。それを見て荊姫は勝利を確信してさらに笑みを深める。
「中々に楽しめたわ。」
雫の荊姫を見る目に諦めを浮かばせながら。
「はぁー。これはダメだと思ってたですけど、そんなこと言ってる場合じゃないですね。新作です。ご賞味するです。」
「ドッカーーーーン」
今までの爆発とは比べ物にならない大爆発がフィールドを埋め尽くした。
雫が使用したアイテムは、通常のボムの一回り大きな物。そのアイテムの名前は「ビックボム」。ボム同士を錬成した物であった。ただこれの威力は想像を絶するためフィールドの地形すら変えてしまうほどの威力のため今まで使用をためらっていたのだ。ただそんな余裕が無くなってしまったため今回使用したのだった。
「ふう、やっぱりこれはあんまり使いたくないです。うるさいです。」
雫たちは例のごとく影から這い出てくる。ボスのフィールドを埋め尽くしていた荊も見るも無惨になっていた。しかも荊が生えていた地面もえぐれてしまい荊が生えてくる様子は無い。
「なっ何よ、何なのよ。これは。」
ただ、荊姫は、全ての荊が結集して荊姫を守ったため、なんとか無事であった。雫が荊姫に近づいていく。もう荊姫を守るものは何もない、攻撃する手段も無い。戦闘する手段を全て失った荊姫は、雫から距離をとろうと後ろに後ずさる。
「やめて。やめてちょうだい。お願い、お願いします。」
さっきまでの口調も忘れ、必死に懇願する荊姫。それを見た雫は一言。
「私があんたの荊を奪ったです。じゃあバイバイです。」
初めて荊を失った荊姫の最期は、閃光と爆発音と一緒であった。




