プレゼント
ゲームを始めた日の翌日、雫は引き続きログインしていた。
「これ美味しいです。ね、わんこ。」
「わん わん」
串焼きを手にし、食べながら街の中を歩いていく雫。
「なんでゲームの中なのに味覚があるんですかね?」
些細なことを考えながら歩いていく。すると、
「おお、やっと会えた。昨日ぶりだね。お嬢ちゃん。」
昨日話しかけてきた男が目の前に立っていた。
「こんにちは、何か用です?」
「今日は話を聞いてくれるんだね。」
「用がないならもういくです。」
雫が興味無さげに立ち去ろうとすると、男がわんこをじっと見ていたので、
「わんこのことです?」
「わんこのことです?」
「わんこは名前です。それよりどうやってといわれても、草原を歩き回ってたら拾っただけです。」
「草原というのは、最初のフィールドの?」
「そうです。」
「そうだったのか。あそこにそんなクエストが。ありがとお嬢ちゃん、私の名は、アックス。困ったことがあったらコールしてくれよな。」
フレンド間での連絡手段の番号を残して去っていた。
かわいそうな男である。彼はワーウルフのクエストを受けることは絶対にできないし…
「コール?よくわからんです。まあいいやです。わんこ私たちもフィールドにいくですよ。」
雫のことをよく分かっていなかったのである。
串焼きを買ったときついでに昨日の錬成の残りを売ってみたところ、意外にお金をもらえた雫は今日も素材を集める予定である。
「お金の使いどころがあんまりわからんですけどないよりあった方がいいです。」
昨日わんこが比較的簡単にモンスターを倒していたので、雫はもう少し先のフィールドへいくことにした。
「頼むです、わんこ。私を守ってくれです。」
「わん わん」
始まりの街から先のフィールドへ行くには最初の草原を通る必要がある。最初の草原には何故か昨日よりも多くの人がいたが、そんなことは気にせず雫は奥に進んでいく。
フィールド 静かな森
森には草原よりもたくさんの種類の素材があったため、雫はせっせと採取していく。
道中では複数で現れるモンスターもいたが、難なくわんこが倒していく。
「そろそろ錬成したいです。わんこ。ここで私は錬成するから、ここでモンスターを倒してくれです。」
「わん わん」
毒消し草や麻痺消し草などの草は掛け合わせると、全部中級の草となった。
失敗もちらほらあったが、昨日よりも成功率が高いように思える。
「慣れたんでしょうか。まあ、ここからが本番です。やってやるです。」
雫が取り出したのは中級薬草。
それに昨日作った回復石(微)を掛け合わせる。
「いくです、『錬成』」
回復石(微)+中級薬草→回復石(小)
「ふぅ成功です。やっぱり慣れてきたんでしょうか。いいことです。あとは、これをこうしてっと。」
回復石(小)を手に持ったまま、串焼きを買ったときに隣で売っていた紐を取り出して錬成する。
回復石(小)+紐→回復石(小)紐付き
これで首にかけれるようになった。
「ほんとにできたです。錬成便利です。わんこ、こっちに来るです。」
「わん?」
「これつけるです。これからも頼むです。」
「わん わん わん」
わんこは嬉しそうに雫をなめる。
「止めるです。こら、わんこ。まったくです。」
わんこへのサプライズプレゼントは成功したようだった。