いつもと違う
雫は海底トンネルを順調に進んでいた。そして雫の要望通り、可愛らしい魚たち等も出現し始めた。しかしそういったモンスターは今までと少し違う出現の仕方をしていた。
海底トンネルの特徴は周りの海からモンスターが攻撃をしてくることである。雫が通っている、水が無い道にもモンスターが出てくるのだが、それとは別に海の中にモンスターがいるのだ。
「うわっ、また水が来たです。」
海底トンネルに出現するモンスターが使う魔法は水魔法。道いっぱいに広がって水が迫ってくるのは珍しくもない。しかし範囲攻撃は雫たちには効かない。そのためフィールド探索をする上では、特に問題はなかった。しかし雫である。
「凄いです。あそこの魚光ってるです。あっちは虹色できれいです。本当に水族館みたいです。」
綺麗な魚たちに夢中でフィールド探索をしているという自覚がほとんど無い。
「~♪~♪~~♪」
雫と一緒になって喜んでいるのはアンフェである。アンフェも可愛いものや綺麗なものはすきなようだ。そんな二人は敵が居てもお構い無しにフィールドを駆け回っている。
普通ならモンスターの攻撃の絶好の的なのだが、そこは今まで雫を守ってきたわんこと鉄ちゃんの二人である。雫の予想外な行動など慣れたもので、雫たちには傷一つ負わせていない。
「アンフェ、アンフェ。今度はタコですよ。ほら足が八本あるです。変な形です。」
次に雫が見つけたのはタコであった。タコの特徴は二つ。1つは雫の言った通り八本の足があること。そしてもう1つは、黒い墨を吐くことであった。
「うわ!真っ暗です。なんも見えんです。こうなったらこっちもです。「暗闇」」
お返しに雫も「暗闇」を発動する。相手の視界を奪ったはずが自分の視界も奪われて焦ったタコは逃げようと雫から距離をとるが、すでに遅い。白蛇に会ったときから視覚阻害をされても大丈夫ように特訓を密かにしていたわんこによってタコは串刺しにされた。
「やっぱりいきなり見えなくなるのはびっくりするです。」
その後も雫はお魚鑑賞しながらゆっくりと海底トンネルを進んでいった。
次の日、いつも元気な小枝がため息を吐いていた。そんな小枝を心配してクラスの女の子たちが声をかける。
「小林さん、どうしたのため息なんてして。」
「べつに大したことじゃないよ。VVOで
ちょっとね。」
「それか。私はやってないけどお姉ちゃんがやってて、凄い面白いって言ってた。」
「まあそのゲームで少し同じパーティーのメンバーに迷惑かけちゃってて、それでちょっと落ち込んでるの。」
「そうなんだ。元気出してね。」
そんな女の子たちの会話が行われているとき、男子たち、特に小枝のことが気になってる男子はここぞとばかりに小枝を励まそうとしている。そのようにクラスがざわめいているとき雫は一人で本を読んでいるのであった。
そんなのがあった帰り道。
「へー。火竜ですか。」
「そうなんだ。昨日初めて火竜に挑んだんだけど負けちゃって。私の武器は短剣だから火竜戦で全然役にたてないの。」
「そんなもんです?私なんて装備してる武器なんてないです。というか戦闘で私は役に立つより足引っ張る方が多いです、」
「でもボスを倒せてるでしょ。」
「何かさえらしくないです。どうしたです。」
「昨日のがちょっとダメージ大きかったのかも。」
「よくわからんですけど、火竜戦で役に立てないなら別のところで頑張ればいいです。」
「そうかな。」
「そうですよ。それでも火竜戦で活躍したいなら手を貸すですよ。」
「ふふ。しずちゃんの手を煩わせないように頑張るよ。ありがとう。少し元気でた。」
小枝にいつもの笑顔が戻っていた。
「さえもよくわからんことで悩むです。今日も頼むですよ、わんこ、鉄ちゃん、アンフェ。」
他力本願上等な雫にとっては当たり前の考えであった。
「火竜戦で役に立てないってさえが悩むなら、私はずーと悩まなきゃならんです。」
雫は今日もいつも通りである。




