親子の
他の中級薬草で回復石(微)を更に作ろうと試してみたものの成功したのは最初の一回だけであった。
「この石は持っていればいいっぽいです。」
回復石(微)は名称通り持つだけでHPを回復してくれるアイテムである。
その回復量はほとんど無いに等しいためアイテムとしての価値は低い。
「私は戦えないしわんこはこれ持てないしです。この使い道はまた考えるとするです。」
「わん わん」
「まあ石でも錬成できたなら次からは、いろいろ試してみるです。」
そうこうしてる内に現実世界ではもう19時を回っていた。
ゲーム時間でもこれから夜になるようだ。
「もう遅いですし一回戻った方がいいです。」
雫はログアウトすることに決めた。街の中にいるのなら基本的にどこでもログアウトできるので、このままログアウトする。
「じゃあまたなです。わんこ」
「くぅん」
わんこは雫のいない間はアイテム扱いでメニューに収納され、ログインとともに姿を現すようになっている。
「なにやってるですか。父さん」
「おお雫。ああなに気にするな。」
「そうですか。わかったです。」
自分が勧めたゲームを娘がやってくれていて気になって見ていたとは言えないらしい。
「まあいいです。それよりお腹すいたです。」
という雫の一言で話の続きは夕飯でとなった。
夕飯の支度を済ませ、父親と二人で食卓につく。
話は自然とゲームのことになった。
「それでゲームは楽しかったか?」
「なかなかいい感じです。最初はどうなるかと思ったですけど、わんこのお陰です。」
「わんこ?」
「最初の草原歩いてたら出会ったです。チビだけど、なかなか強いです。」
「ワーウルフのクエストか!」
「そうですけどなんだ知ってるですか?」
「いやちょっとな。」
「ふぅーんまあいいです。ああ、あと生産職になれなかったです。間違えちゃったです。」
「えっ大丈夫なのか。なんの職になったんだ?」
「錬金術師です。」
「やばくないかそれ、変えた方がいいだろかなりやりにくいだろ。」
「まあなんとかなるです。やってみたいこともあるです。おっともうこんな時間です。風呂入ってもうねるです。お休み」
「ああ、お休み」
雫は自室に戻って行った。
「我が娘ながら初日からいろいろやってるようだな。というか錬金術師でどうやってあのクエスト発生させたんだ?」
雫の父親は『variety virtual online』の運営の一人である。ただその事を雫には黙っていないといけないため、せっかく娘がゲームに興味を持ってくれたのにと寂しさをにじませていた。
「まあ、あれだ。あいつはやっぱり母さん似だな。」
自分の妻のことを思い浮かべながらそう呟いた。