三度の驚き
「さえ、どうしたです。大丈夫です?」
雫が小枝を心配する。するとレディが助け船をだす。
「ほらこえだもしっかりしなさい。それとしずちゃんだっけ、ゲーム内でリアルの名前は言っちゃダメよ。」
「ああそうだったですか。すまんです。」
「えっとすいませんレディさん。」
場の混乱も少しは収まったところで場所を変えることにした。
「それにしてもシズちゃんは何でこんなところにいるの?私てっきり最初の街でうろうろしてると思ってたのに。」
「何でと言われてもただ真っ直ぐ進んできただけです。別にここまで来るのに迷ったりはしないですよ。」
「そういうことじゃなくて。ここに来るにはグリフォンとかのボスを倒さなきゃダメなんだよ。」
「ボスなら倒したですよ。」
「どうやって?だってシズちゃんはパーティーとか組んでないって。」
「ああ違うです。私は「他のプレイヤーと組むのは面倒だから嫌です。」って言っただけでパーティーを組んでない訳じゃないです。」
「どういうこと?」
また小枝が混乱して来たのでレディが
「その狼と組んでるのよね。」
「そうです。あと狼じゃないです。わんこです。」
「ふふ。かわいい名前ね。たしかわんこちゃんはこの前のイベントで2位だったわよね。」
「へーそうだったんですか。凄いですわんこ!」
「し、シズちゃん。何でシズちゃんが知らないのよ。というかシズってことはシズちゃんもイベントで上位だったよね。」
「別にそんなことどうでもいいです。というかこえだでしたっけ?それでそっちがレディさん。もう行っていいですか?世間話は得意じゃないです。」
「あ、待ってあなたを呼んだのは一つお願いがあるのよ。あなたはクランには入ってないのよね。」
「そうです。」
「なら私たちのクランに入らないかしら。ほら友達もいるし心強いでしょ。」
「うーん、それはやめてくです。クランは面倒そうですし、色々とやりたいこともあるです。」
「本当に入る気はないの、私たちのクランは…」
「ないです。その答えは変わらんです。」
「そう残念ね。」
レディの勧誘が一通り終わる。
「もう一つこれは質問なんだけどあなたが使っていたとされてる爆弾。あれはどうやって手に入れたの?まだ持ってる?」
レディは雫の使っていた爆弾はレアなドロップ品だと予想した。そのためもう雫は爆弾を持っていないと予想していた。そして
「ああ持ってないです。」
レディの予想通りの答えであった。しかしそのあとの返答でその予想は覆されることとなる。
「今は爆弾じゃなくてもっと強いボムってのなら持ってるです。」
「え?ボム?」
「あと手に入れたというか私が作ったです。」
「え?作った?」
「はいです。私、錬金術師なんです。」
「え?錬金術師?」
三度の驚きに見舞われたレディであった。
雫が去ったあと残されたレディと小枝。
「あなたの友達は凄いのね。」
「はい。私もシズちゃんには驚かされてばっかりで。シズちゃんってゲームのこと殆ど知らないんですよ。」
「そんな感じよね。それであんなに強いなんて本当に凄いわ。」
「そうですね。」
「こえだ、シズちゃんにボムを私たちのクランのために作ってもらえないか頼んでみてくれない?」
「へ?」
「もうひと押しよ。シズちゃんの爆弾の強化版のボムが少なくても手に入れば対抗戦で凄い有利になるわ。そうすれば上位入賞じゃなくて優勝も狙えるかも。」
レディはその未来が見えていた。ただ雫がそれを受けるかはわからないのだが。
雫は亜人の街に来ていた。
「そういえば昨日魔人とやらを倒したんですけど、やっぱり亜人とは違うんですよね。」
「そうだな。魔人はフィールドに出てくるようなモンスター、魔物から転じて人の見た目になったんだ。」
「そうね。だから亜人と魔人を一緒にしたら他の皆が怒っちゃうからダメよ。」
「わかったです。」
久しぶりの再会に全員楽しそうであった。
「そういえばシズさんは『錬成』を2段階も進化させたんですよね。わんこさんも進化して月夜狼になってますね。」
「本当に凄いわ、もうランじゃ歯か立たないかもしれないわね。」
「そんなわけあるか。まだこいつには負けん。」
「わんわん」
レディと話してるときとは全然違い雫は凄く楽しそうであった。




