腹ペコの女の子
「そういえばしずちゃんはクランとかに所属してたりするの?」
「そういったのは面倒そうだからパスです。そういえばさえは入ったです。」
「うん!私はこの前レディさんっていう人がクランに誘ってくれたの。」
「へーそれは良かったです。」
「雫もそこに入らない?女の子なら基本的に入れるクランなんだけど。」
「ああいいです。面倒です。それに今回のイベントはパスです。別に色々とやりたいことがあるです。」
「そうなんだ。そういえばしずちゃんっていうか錬金術師って何やってるの。錬金術師のプレイヤーが殆どいないからわからないんだよね。」
「はあ。別に大したことはしてないです。素材を集めて錬成しての繰り返しです。」
「それって楽しいの。」
「楽しいです。色々と発見もあるですし。」
「まあそれならいいんだけど。」
ゲームにログインした雫は今日は森に入らず街の散策をしていた。
「やっぱりこの街はポーションとかが多いです。」
一時的に雫はこの街での買い物が出来なくなっていたが、雫がキールを葬ってから少したつとそれも元に戻り、雫も普通に過ごせるようになっていた。
雫が少し歩いていくと来たことがない場所にたどり着く。
「ん?ここどこですか。何か初めてくるとこですね。何かボロいです。」
そこはこの街の貧困層が住む地域であった。そこを歩いていくと雫の目の前に女の子が倒れていた。
「大丈夫です?どこか痛いですか。」
雫が話しかけると女の子は、
「お腹すいた。なにか…」
そして雫の目の前にはクエストの文字が現れる。しかし雫はそれを見もせずに女の子に話しかける。
「腹へったですか。それならいいものがあるです。」
雫が取り出したのは森の中で取った果実などであった。雫が何個か女の子に手渡すと凄い勢いで食べ始める。
「おお、凄い食いっぷりです。よっぽど腹へってたですか。」
腹ペコの女の子は自分のお腹がいっぱいになると次は遠慮しがちに雫にお願いをしてきた。
「私の住んでるところで皆お腹すかしてるの。お姉ちゃん助けて…」
女の子は感覚で分かっていた。自分が食べた果実は自分達が逆立ちしても買えないような物であることを。事実この果実は雫が森の奥で手に入れたものであるため売ればそれなりの値段になる品物であった。しかし雫は、
「いいですよ。それじゃその皆のところに連れてってくれです。」
こともなさげに承諾した。雫にとって素材とは錬成に使うものとそれ以外に分けられる。果実は後者であったため大量に残っていた。
「あ、ありがとうございます。それじゃ案内します。あっそれとお姉ちゃんの名前は?私はカリン。」
「私はシズです。それじゃ案内頼むです。」
雫は女の子の案内で移動する。
カリンが向かったのは孤児院であった。
「シズお姉ちゃん、ここだよ。わんこちゃんとアンフェちゃんも!」
移動中にアンフェやわんこと仲良くなっていた。
「それじゃその皆とやらを呼んでくるです。」
カリンが子供たちを呼んでくる。雫が持っている果実などの食べれる物を全て渡す。子供たちがカリンと同じように凄い勢いで食べ始める。そしてそれを見ていると、孤児院を管理しているシスターが雫の前に来て。
「どなたかは存じ上げませんがありがとうございます。このお礼は必ずいたしますので。」
「ああいいです。在庫処分です。いらない物をほしい人にあげてるだけです。」
「そうですか。」
雫たちが話しているとカリンたちが雫の前に集まってきてお礼を言った。
「ありがとうございました。」
「別に気にする必要はないです。まあまた困ったら言うです。また果物ぐらいなら持ってくるです。それじゃあさよならです。」
雫が孤児院をあとにしようとしたらカリンが
「シズお姉ちゃん、これ上げる。」
と言って雫に手渡したのは白い玉であった。すると雫の前にクエストクリアの文字が現れた。
「あっこれクエストだったんです。忘れてたです。」
雫はカリンから白い玉を貰って孤児院をあとにした。




