面倒ごとの予感
クラン関係の混乱も徐々に落ち着きを取り戻し始め、プレイヤーたちはゲーム攻略に戻っていった。
そこで問題になったのが鉱山フィールドの攻略である。鉱山の山頂へのルートは何本かあるのだがそのルート全てが殆ど一本道のため出現するモンスター全てを相手取る必要があり。回復アイテムがすぐに尽きてしまうという問題があったのだ。そのためプレイヤーたちは今までの6人パーティーでの攻略ではなくもっと大規模での攻略に踏み切った。クランが誕生したため、クランごとに攻略に挑戦していったのだった。
しかしこれは失敗に終わる。挑んだクランがことごとく全滅してしまったのだ。しかもフィールドボスの火竜ではなくその取り巻きであるゴーレムによって殆どのプレイヤーが撃退されたのだった。流石におかしいと感じたプレイヤーたち。何個かのクランが協力して検証を繰り返した結果、6人パーティーよりもプレイヤー数が増えるとその分ボス戦に出てくるモンスターの強さも上がるということを発見したのだ。やっとそれに気づいたプレイヤーたちにはデスペナが重くのしかかっているのだった。
ゲームの攻略サイト、掲示板等が激しく荒れている最中、雫はお構い無しに進んでいった。この頃フィールドで取れる薬草や木の実が不自然なほど上質なものばかりであり雫のテンションも上がっていた。
「やっぱり加護のお陰です。なんか木とか草とかが前より優しくなった気がするです。」
何ていいながら森の奥へと進んでいく。少し進んだところで突然雫が、
「わんこ!その花ですその花を攻撃するです。」
とわんこに命令する。わんこが影を使って雫たちの前に咲いている花に攻撃すると、なんとその花はモンスターであった。花に擬態していたのだ。「くぅん?」
わんこが雫になぜわかったのか疑問に思うと雫は
「なんか何となくだけど分かるです。」
雫にも説明できないようだが、雫は虫たちの不意打ちを全て看破して見せたのだった。しかしこれは森の中だけの話であったので雫は、
「やっぱりドリーの加護はすごいです。また今度お礼するです。」
雫と加護の相性はかなり良かった。真っ正面から雫たちのパーティーに敵うものは殆どいない。しかし森などの隠れる場所が多いフィールドでは基本的に不意打ちによる攻撃が主となってくる。しかしそれが潰せるというのは植物が生い茂ったところ限定でもすごいことであった。
加護のお陰でフィールドの攻略は快調であった。
「よーし今日も森にいくです。」
と雫が張り切っていると後ろから声がかかる。
「そこの者、俺に力を貸すことを許可してやろう。」
随分と偉そうな物言いである。こんな偉そうな態度をとられたら普通の人は不機嫌になったりするものである。、しかし雫は気づくことなく通りすぎる。
「今日は本にもあった栄養剤ってのを作るです。いつも採取してる木に元気になってもらうです。」
完全に無視である。そんなことをすればその偉そうな男は黙ってない。
「貴様この俺様が誰だかわかっての態度か。」
雫はわかっていない。というか気づいていない。そのまま立ち去ろうとするので、男の取り巻きが雫の行くてを阻む。
「このお方をどなたと心得るこの第4の街の領主の息子、キール様だぞ。」
雫はしっかりとその取り巻きの話を聞いて一言。
「知らんです。」
これには偉そうな男改めキールも黙ってはいない。反論をする。
「この街で二番目に偉い俺を知らないだと。ふざけるな。」
雫はそろそろ森に行きたいので強行策に出ることにした。
「知らんもんは知らないです。それじゃです。」
雫はボムを投下する。勿論街中なので戦闘禁止区域なため、攻撃にはならないがアイテム使用のエフェクトは入るため煙幕の代わりにはなるのだ。前に人に囲まれたときように、色々実験していたのだ。そのままわんこに乗ってその場を離脱する雫であった。
「なんか面倒なのに絡まれたです。だるいです。」
これから雫は権力の面倒くささを身を持って知ることになる。まあその前に権力が雫の恐ろしさを知るのだが。




