聖都の大事件
聖国において極限まで信仰ポイントを集めた廃信者だけが入場を認められると噂されている聖域『聖都』。その中心部において現在、異教の神二柱を相手に聖国内を守護する『聖騎士』が奮闘していた。
本来、街中で戦闘するならばダメージ無効エリアにおいて一方的にダメージを与えられる権限を持つ『聖騎士』に勝てる相手はいない。しかし度々忘れかけるが神である雫、そして正真正銘神であるわんこが相手では話が違う。
「衝撃マシマシ、爆風強めのボム祭りです!」
「くぅん」
「退避! たいひー」
ダメージ無効であっても攻撃の衝撃は無効化されない。そのため雫が街中などのダメージ無効エリアで使用するために開発したボムによって『聖騎士』たちは次々と吹き飛ばされていくのだった。しかし建物は破壊不能ギミックであるためびくともしていない。それならば『聖騎士』自体に攻撃を無効化する能力やより強力なステータスを与えればいいのにと考える雫。そんな雫のもとに彼女が考えたとおりの『聖騎士』が送られてくる。
「さっきまでのは下っぱですか。これは厳しいかもです」
「わんわん!」
「その通りだ! 貴様らの蛮行も…」
「よしわんこ。逃げろです!」
「わん!」
「………待ちなさい!」
脱兎のことく逃げ始める雫たち。突然のことで呆ける『聖騎士』たちだったが直ぐに持ち直し追跡を開始する。
「速さならわんこの方が上ですね…」
「わ、わん!」
「排除します!」
「っと、危ないです。突然目の前に現れたように見えたです…またです」
「くぅん」
『聖騎士』は聖国内であれば様々な権能を使える。その一つが短距離転移である。聖国内限定とはいえ無制限に使える転移は戦闘や追跡には最適な権能である。
そんな『聖騎士』たちを見て、逃げに徹していては逃げ切れないと感じた雫は攻撃を再開する。しかしそれらは全部不発に終わる。爆発系は無効化され拘束系は拘束できたところで転移で逃げられる。その他にも色々と投下したがあまり効果があるものがなかった。
「こうなったら私の秘蔵っ子を無差別投下するしかないです」
「わふぅ!」
「…冗談です。流石にここでそれをやるのはもったいないです。ていっ! となると『死併せ』で死なない私を置いて取り敢えずわんこだけ、てい! 逃げてもらうです?」
「わんわん!」
「駄目ですか。ていっ! ならどうするか…あれです?」
話ながらボム投下を続けていると、先ほどまで血眼になって追いかけてきていた『聖騎士』たちが何かに驚愕しているのがわかった。なぜ驚愕しているのか分からないが雫たちにとって今が逃走のチャンスである。
「わんわん」
「そうですね。今のうちに逃げた方がいいです。それにしても何が原因です? 話すのに夢中で何を投げてたのかもハッキリと把握してねーですけど」
「わふぅ!?」
「あとで在庫調べるからいいです」
「わん」
秘蔵っ子は使用しなかったが無差別投下は実行していた雫に驚愕するわんこは、流石の慣れを発揮し即座に逃走を再開するのだった。
後に在庫確認した雫は絶叫する。
「『生えわたる菌界』にシロの『失墜』を付与錬成した自信作、『感染する最弱』を適当に投げちゃってたです」
「わふぅ!?」
それを聞いてわんこも絶叫することになるのだがそれはべつのお話し。
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聖国の中心部『聖都』において前代未聞の事態が幾つも発生していた。まず起こったのが『聖騎士』たちの機能停止。その次に『聖都』全域に未知の茸が生え渡った。そして最後に『聖都』に住む住民たちの信仰ポイントが消失した。
『聖都』に入れるということは凄まじい信仰心により莫大な信仰ポイントを積み上げた『聖国』の主要人物たちである。そんな人たちの信仰ポイントの消失は、国家を揺るがす大事件である。
そしてその原因は『聖都』に生え渡った茸にあるということが判明した。『聖都』から離れて数時間ほどで信仰ポイントが元に戻った者が『聖都』に帰還したため判明した事実だった。彼らは再度信仰ポイントを失った。幸か不幸か『聖騎士』は信仰ポイントが不足している者がエリアにいる場合排除する使命を持ちつつ、自身も信仰ポイントが不足するという自己矛盾により機能停止していたため、再度信仰ポイントを失った者たちは排除されることはなかった。
そんな者たちにより茸狩りが実施され焼却処分されることで『聖国』建国以来の未曾有の大事件は一応の終結を向かえた。しかし今回の事件による余波は凄まじかった。絶対の指標であった信仰ポイントの消失。それに伴う国家の機能停止。被害に遭った者たちは信仰ポイントを失った信仰心不足のレッテルを貼られる二次被害。これらは本当に信仰心を失わせるのに十分な出来事であった。
この通称『信仰消失茸大発生』事件は『聖国』の国力を落とし、神々に多大な祈りを届けていた国の失墜により結果的に『神国』の国力を落とすことに繋がるのだった。
雫にやらせたいことを思い付いた時、絶対面白いと思ってそのために必要な繋ぎの話を書いてるうちに本当に面白いのか不安になり、いざその話を書き始める頃には当初の自信を完全に失っているこの現状。
しかし今さら話の辻褄の合うオチを用意できるほどの才能はないから開き直って投稿。
言い訳です。




