聖道と異神
急遽わんこたちを召集して向かった先は『聖国』へと続くフィールド『聖道』であった。とは言え魔国に行くために通るフィールド『魔大陸』等と比べれば出現するモンスターのレベルは低く本来なら苦戦するようなフィールドではない。しかしとある事情によりモンスターたちが普段より奮闘しているため、ペースが落ちていた。
「くぅん?」
「…………」
「かみだから♪」
「そうそう。あるじたちのせい」
「わんわん!」
「…………」
「なるほどです。私たちがこいつらの信仰する神々と敵対する神だから怒って頑張ってるんですね」
「そうだよ♪」
『聖道』のモンスターたちはおおよそ信仰系ジョブに就いており、自身が信仰する神と敵対するモノと相対するときにバフが発生する事がある。通常は異教徒との戦闘で発揮されるモノだが今回は異教祖や異神が相手のためそのバフがより強力になっているのかもしれない。
「まあ時間が掛かるようなら言えです。新型ボム『生えわたる菌界』を使ってみるです」
「くぅん」
「じごくえずになりそう」
「…………」
「はやくやる♪」
のこちゃんずとボムのコラボ作品のレベルは徐々に上がっており、その性能はわんこたちが同情するレベルである。早めに倒してあげる方がどちらにとっても良いことのため、わんこたちの殲滅速度は飛躍的に上昇するのだった。
「…残念です。ちょっと自信作だったですけど」
「ピィー」
このため『聖道』が菌界に侵食されることはなかったのである。
――――――――――
『聖道』で敵対する神との戦闘に常時バーサーカー状態のモンスターたちを退け、激昂するボスを倒し何とか『聖国』へ入国を果たした雫たち。魔国に所属しているプレイヤーは現在、他国にいると居心地が悪い思いをするとの情報をハルから教えてもらっていた雫だが、これは居心地がどうこうの問題ではない。住人全員が殺意ある眼で此方を見ているのだ。
「さてとです。ホントに最低限の施設にしか入れないです。姿を隠すとかそういったズルが全く通じないです」
「わん!」
「わんこの影でも無理てすか。となるとです…」
信仰ポイントが無い雫たちには、物理的に侵入できない領域。視覚的に騙そうが、影からこっそり侵入しようが入れない。やはり入るには信仰ポイントが必須のようだ。現在『神魔大戦』の影響で魔国に所属する雫たちは信仰ポイントが稼げないのだが。
「法則変更系、パラメーター操作系ですか?…私たちのポイントが0なのを考えればあれがいいかもです」
「くぅん?」
「まあ無理なら別の方法を試せば良いです。ねぇシロ?」
「あるじ、いいほうほうでもおもいついた?」
「まあです。信仰ポイントが多いほど偉いってことはです、そのポイントが0の私たちは最弱ってことです。ならやるべきことはなんです?」
「ああ、そういうこと」
「とは言え私が再現したのはアレの劣化版です。造るならついでにあそこで本家を見に行くです」
「こーん。りょうかい」
アイディアが閃いた雫は、一旦『聖国』を後にし、とある場所に向かうのだった。




