神々と顔合わせ
とある神域にて、各神域から八百万の神々が集結してきていた。
「にゃにゃにゃ! 見たことあるのからないの迄、いっぱいだにゃ!」
「そうですな」
何処からともなく現れる扉から、次々と神が登場する中で、圧倒的な存在感を誇る獅子頭を持つ従属神、を引き連れたただの猫の登場に他の神々が注目する。
「ね、猫神様まで! やはり今回の召集は…ただ事ではないぞ」
「当たり前だ。高位神さまが軒並み揃ってらっしゃるのだぞ!」
ただの猫を崇める神たち。そんな神を見下すように口を開く者が1人。
「おい猫! てめぇごときが遅れるとはどう言う用件だ! 燃やされてーのか!」
「にゃ! 相変わらず口が悪いにゃ! 片割れが消えて内心びびってる陽にゃにゃいか」
「あぁ!」
「にゃっ、そ、それに我輩は遅れてにゃいにゃ。イウ様に招待されてたのに気が付いたのがさっきなだけだにゃ!」
「なおさらダメダメじゃねーか! 相も変わらずだらけきってやがる!」
そんな会話を続ける2柱だが、周りは慣れたものなのか、気にせず他の神たちと談笑を楽しんでいた。自身の神域に引きこもりがちな神々にとってこのような機会は滅多にないのであった。
そして殆どの神々が集結し終わったタイミングでとある神が現れる。
誰かの理想を詰め込んだような、圧倒的な美を体現した者がそこにいた。そう。彼女こそが八百万の神々を召集した最高位神『絶対神イウ』であった。
「やあ、皆久しぶり。集まってくれて嬉しいよ」
「にゃんとにゃんと」
「イウ様に呼ばれれば集まるのが普通。来ないものなど論外だぜ」
「陽。それは陰のことをいってるのか? ならばやめろ。陰は私にとっても、そして君にとっても大切な存在だろう?」
「…了解」
「にゃはは。素直になったにゃ」
「猫も茶化さない」
「…にゃ」
高位の神であっても『絶対神』には逆らえないのか、先ほどまで騒がしかった神域が静まり返っていた。それを確認したイウが喋り出す。
「さて、今日集まって――――」
その時、新たな来訪者の到着を告げる扉が出現する。敬愛する『絶対神』の言葉を遮ったことに怒りを露にし扉を睨み付ける神々。そんな視線を浴びながら神域に入ってきたのは、
「ふむふむです。何か変なのがいっぱいです」
「わんわん!」
「………」
雫たちであった。
見知らぬ者の登場に困惑する神々の中で、それなりの数の神は雫を知っていた。
「…陰のやつを滅ぼしたのの親玉だろ、あいつ! 何でここに!」
「ふむ。3匹だけか。私の記録にはもう少し多いとあるが」
「ンデモイイ! キタナラホロボスマデ!」
王国に自身の部下を送っている者たちは、特に雫の理解不能な攻略方法に狂気を覚え、陰神が倒される前から情報を集めていたため意外にも神々の中での認知度は高かった。
警戒しており最近、高位神を滅ぼしたばかりの目下の最有力の敵が目の前に現れたのだ。神々は即座に臨戦態勢を取る。一方で雫たちは全く無警戒に神々を見ていた。
「こう見ると思ったほど神って多くないですね」
「わん!」
「…貴様! 我々を愚弄したか!」
神経を逆撫でするような行動を取られ、我慢の限界を迎えた1柱の神が攻撃を放った。しかし、その攻撃はこの神域の設定に阻まれ無効化される。
「申し訳ないが皆。ここは会議の場だ。ここではいかなる攻撃も意味を成さないようになっている」
「あ、やっぱりです。なんとなくそんな気はしてたです」
「ふふ。だが場を荒らされ過ぎても困る。貴殿にはここらでご退室願うよ」
「…もうです? 折角招待されたのにです」
「残念ながら私の宣言は『絶対』なのでね」
「まあお前の顔が見れたですし、まあいいです」
そう言葉を言い残して雫たちが神域から姿を消す。イウが退室させたのだった。
不遜な神敵を振り回すイウに、残された神々は胸をすく。しかしそれとは別に疑問も残る。
「イウ様にゃ。別にいいにゃけど何でアイツをここに来させたにゃ?」
「ちっ! 俺はよくねーよ!」
「陽。話をややこしくするな。イウ様。私どもも疑問に思います。何故この神聖なる神域にあのような者を招待なされたのですか?」
当然の疑問である。戦闘が出来るのであれば、戦力が揃っている今、敵を呼び込み袋叩きと言うのも1つの手である。しかし戦闘無効のこの神域に呼び出す理由は不明であった。
「ふふ。会議の前にこれからの敵を確認しておくのもよいだろ?」
「にゃるほど。にゃっとくしたにゃ」
「イラつくだけだかな!」
「陽! そうですね。素晴らしいと思います。これで我々一同があの不遜な輩を滅ぼすべく一丸となれると言うもの」
「そうだろう? ならそろそろ会議を始めよう」
そう『絶対神』イウは話をまとめるのだった。実は招待を一斉送信する際、『神』を一括選択したため雫たちにも送信してしまったとは誰も思わないのであった。




