丸投げ
『神魔大戦』を壊す。そう宣言した雫はこれまで数々のイベントを荒らしてきた。荒らしてきたのだが、それは結果的にそうなったと言うだけであり、自発的にイベントクラッシャーをやっていた訳ではない。
しかも今回は今までのように雫1人勝ち展開では問題は解決しない。根本的に『神魔大戦』を壊す必要があるのだが、それが無理難題であることは明白。そんな無理難題の言い出しっぺはというと、
「この犬っころたち、なかなか見所があるです。流石わんこの犬です」
「「キャンキャン」」
「ほら取ってこいです!」
「ピィェー!」
「あ、ラス。お前は違うです!」
新しい眷属たちと戯れているのだからたちが悪い。しかしそれが雫なので仕方がない。主人を放って置いてわんこたちは案を出し合う。
「わんわん」
「………」
「わんにい、てつにいみたいにゴリおしできるならいいけど」
「むりだろ♪」
「げんじつてきには、おやだまをたおす?」
「くぅん」
神域を見つけ出して片っ端から倒していく方法は、いくら時間があっても足りない。加えて神クラスを単独で相手取れるのはわんこと鉄ちゃんだけであるため、『神魔大戦』を壊すには至らないだろう。そもそもアンフェやシロ、一応ラスが参加出来ない案のため却下である。
となると『神国』のトップ。魔国でいう魔族王的な存在を倒すのが手っ取り早いのではという話となった。
その旨を遊び疲れた様子の雫に伝えると、少し黙り込み、半眼でわんこを睨んだ。
「それなら情報収集として、わんこが倒した『陰神』でしたです? それを残しておけば早かったです?」
「わんわん!」
「「キャン!!」」
わんこが言い訳として、最後に食べたのはこの御使い犬たちですよと言い、いきなり矛を向けられた御使い犬たちは慌てだす。
「わんにいがじょうだんいうなんてめずらしい」
「うかれてる♪」
「………」
御使い犬はしばらくの間、眷属ができてテンションが高いわんこと、そんなわんこを見て気分が良くなった雫にいじめられるのであった。
とにもかくにも、大まかな活動の指針は決定した。それを実行するためには神の中でもそれなりに高位の神から情報を集める必要があるが、それはわんこたちに任せる事とした。何と言っても陰神を見つけた実績がある。しかも今度は一対一ではない。陰神以上の強敵と出くわしても何とかなるだろう。
雫は現在進行形の問題の一部の解決策を思い付いたので、それを実行するための一度孤児院に戻ることとした。
「孤児院までの道のセキュリティをもっと強固にすれば良かったです。前に色々弄ったときから手付かずでしたし。私が終わったら、アンフェの『虚の理』でやって欲しい事があるですから、来てくれです」
「わかった♪」
そもそも自分のパーソナル空間に部外者が現れたのが今回の平和的破壊宣言の原因である。結局、原因の一端の『神魔大戦』をどうにかしてもセキュリティがばがばのままでいれば、また別の部外者が現れるだろう。
もともと第4の街にある孤児院のためHPが減る様なギミックは仕掛けられない。そのためのこちゃんずやアンフェの『幻惑魔法』で来れないようにしていたのだ。しかしそれだと絶対ではないと今回で証明された。そのため更に凶悪なギミックを作るべく、雫が試行錯誤することになる。
後に孤児院に向かおうとしたプレイヤーはこう語る。
「キノコの軍勢と一緒にダンスしたとこまでは覚えている」




