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絶対音痴

 演奏や歌唱といった音系の補助スキル数値だけを見れば他のバフ、デバフ系スキルと比較してもトップクラスの高さを誇っている。しかし多くのプレイヤーがそれらの専門家である音系のジョブに就かないのには理由がある。

 第1に魔法系に存在する『詠唱破棄』や『無詠唱』のような演奏を省略するようなスキルが存在しない点である。音系スキルは演奏をしなければその効果を発揮することが出来ない。そしてこの事は第2の理由に繋がる。第2の理由は対策が容易な点だ。演奏しなければ効果を発揮しないため演奏中の術者を攻撃するだけでバフ、デバフが防げる。さらに言えば音系スキルの当たり判定は聴こえるかどうかであるため『音爆弾』など、そこらのNPCから買えるアイテム等で容易に邪魔をすることができてしまう。


「他にも頭装備によっては基本耐性で音耐性が付いてることも珍しく無いしね。特に兜とかほぼほぼね。…ほんとに」

「確かに不遇だな。しかしその対策のための『心音』と『絶対音感』だろう?」

「そうだね!」


『心音』は『音爆弾』などそもそも音が届いてない場合は除くが、頭装備で音が聴こえ難くしている者や、そもそも聴覚が存在しないモンスター等にも音系スキルを有効にするスキルである。

『絶対音感』は演奏中に攻撃を受けても演奏を続けるのをサポートしてくれるスキルであった。そして両スキルとも音系スキルの効果割合上昇の副次効果も相まって、煉歌のバッファーとしての能力は飛躍的に上昇することだろう。


「さて。じゃあそろそろ、これについて説明してくれるかな?」

「ふむ。これというのは盟主のお手製スキル『絶対音痴』だな」


 そんな音系術者にとって主要スキルである『心音』と『絶対音感』。この2スキルと同様のタイミングで渡してきたスキル『絶対音痴』。気にならない筈もなかった。


「効果は?」

「大きく分けると3つだ。1つはこのスキルのデメリット的な効果、音系の補助スキルの効果を反転させてしまう」

「反転?」

「例えば対象の攻撃力を20%上昇させるスキルをこの『悪音の弓』で演奏すると、対象の攻撃力が20%減少する」

「バフがデバフになるってこと?」

「その認識であってるだろう。盟主は『やっぱり音痴要素は欠かせないです』と言っていた」

「え、じゃあくらますが扱いにくくなる効果をスキルに追加したの? 音痴要素のために? わざわざ?」

「そう怒るな。気持ちは分かるが。まだ2つ残っているからな」

「…そうだね。続けて」


 効果の反転という咄嗟に間違いそうな効果をノリで付与されてる怒りが込み上げてくる煉歌だが、まだ説明の途中であるし、あまのまひとつに怒ってもしょうがないため取り敢えず続きを聞くことにする。


「もう1つは音系の攻撃力の上昇」

「おお! これは素直に嬉しいかも」


 次の効果は単純な攻撃力上昇。ただ音系のスキルは基本的に攻撃を想定してないためか、『心音』や『絶対音感』のように補助スキルの効果率上昇などはあっても、音系スキルの攻撃力を上昇させるスキルは少ない。

 そして雫とアイを除いた、煉歌たち『神の雫』下位パーティーは攻撃力に乏しいため、攻撃力の底上げはかなり有り難かった。


「それで上昇倍率は? 1.2倍くらい?」

「…装備者のSTRなどのステータスに依存するため細かくはお前次第だが、おそらく2…いや3倍くらいだ」

「は?」

「盟主曰く『音系に絞ってるですからこれくらい上がるです』だそうだ」

「は?」


 攻撃力を2倍、3倍にするには高位のバフを何重にも重ね掛けする必要があるだろう。それを装備スキルの効果の1つとして実現してしまう雫に戦慄を覚える。


「こほん。で最後の効果は演奏者の音の優先度の上昇だ。これは盟主の説明だと『音爆弾』やモンスターの『咆哮』、他プレイヤーの音系スキルよりもこの『悪音の弓』で奏でた音が響くらしい。」

「え、それって」

「とは言え超高性能な『音爆弾』やお前より遥かに格上のモンスターの『咆哮』などには負けるらしいが、それでも音系術者の弱点のおおよそはカバーできるだろう」

「うんうん」


 その言葉に煉歌は目に涙を浮かばせながら何度も頷いた。


「ほんとに大事にしてくれ。我々のためとは言え、我々の全財産叩いても買えないレベルの高級素材を湯水のごとく使わせられて造ったのでな。流石に手が震えた」

「…うんうん」


 その言葉に涙も引っ込み楽器を持つ手も震える煉歌だった。

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