秘密会議
『ダイダロス』唯一の安全地帯にして、地上の『繁華街』にも負けない賑わいを見せている場所『地下街』。それは前まで『地下街』に訪れるためには複雑なギミックを通る必要があったが、現主の影響もあり簡単に来ることが可能となったことが主な要因であった。とはいえ
「ふむ。ここの商品は劣悪品だな。『地下街』には相応しく無いのではないか?」
「なっ!」
「しかし管理者たちの審査は通過したのだろう? それならば我々が口を出すことでは無かろう。それに本当に相応しく無いのならば…明日にでも消えているだろうよ」
「…それもそうか」
「お、おいあんたら!」
「「なにか?」」
「い、いえ…何でもありません」
『地下街』に出入りする者たちの中にはとある神を崇める信者たちが含まれていた。しかもその信者たちの多くは高位魔族、下手をすればそれ以上の存在である。そんな彼らは『地下街』の品位が貶められることを嫌う。
そのため現主の影響で物理的な入場難易度は減った『地下街』ではあるが、現主の影響により精神的な入場難易度はむしろ上昇しているのであった。
そんな『地下街』において一部の者しか立ち入れない部屋が存在する。そんな部屋で今日、秘密会議が開催されていた。
会議に参加しているのは『地下街』に出入りしている者たちの中でも選りすぐりのメンバーである。その中でも特に影響力が強い3名が会話を展開していく。
「ふたつ♪」
「あるじとわんにいがあたらしく『遊具』をみつけたんだって」
「『遊具』というのはここのような施設という認識でいいんですか?」
「そう♪」
「それはめでたいでありんすね。これでさらに活動が捗りまする」
そんな会話を聞いていた者たちには初出の情報だったらしく質問が出る。
「遊具というのはかの有名な『魔族王の遊具』でありますか?」
「そうだよ。ゆうめいかはしらないけど」
『魔族王の遊具』は前魔族王であるサタンを喜ばすために建設された。という名目の下、各管理責任者とその部下たちが自身の裁量で独自に発展させてきた施設である。『地下街』は転移ギミックを駆使した会員制の商業施設。『宝物庫』は機械人形を駆使して外部との接触をほとんど失くした状態で維持可能な倉庫。他にも存在する施設は各管理者の拘りが詰まっており、それ故にサタンをも楽しませる遊具足り得たと言える。
しかしサタンがいなくなってすぐ管理者たちは、全員それらの管理を放棄し消息不明となってしまった。それ故に現存する『魔族王の遊具』は少し前の『地下街』のように劣化した状況で運用されているか、『宝物庫』のように侵入が困難な状況で放置されているか、管理者たちと同様に消息不明となってしまっているかの何れかの状態なのであった。
「そ、それは大変喜ばしいことにございますが、それが我々の活動に関係すると言うとその施設も『地下街』同様、聖地として解放するということでしょうか?」
「さあ♪」
「さ、さあ?」
はっきりと濁した回答をされ困惑する男。しかしすぐに補足説明がなされる。
「私たちが行うのは『地下街』に続き『宝物庫』がサタンから主様に移ったことを大々的に発表することにありんす? それだけで魔族王信仰の方々の取り込みが捗りんす」
「し、しかし聖地として解放した――」
「『宝物庫』は主様のものでござりんす。好き勝手にしていいモノではござりんせん」
魔国の中で宗教が生まれた。すると力こそ全てとされている魔族が魔族王であったサタンを信仰するのは自然な流れである。前魔族王のサタンが『魔神』を信仰しているという情報が流れずらい弱い魔族たちは特に。
それを変えるために彼らは色々とやっているのだが、魔国と『魔神』が関連する場所は今のところここ『地下街』しか存在しないこともあり、魔国での広がりは魔族王信仰に負けているのが現状である。
「まあ、あるじもゆるしてくれるとおもうけどね」
「おもう♪」
「では許された場合と許されなかった場合の2つを分けて考えてみなんし」
それを打破するべく彼女らは日々暗躍するのであった。
思っていたよりも日常編が難しかったのでそろそろ次章『神国編』に進みます。といっても魔国での話メインになると思いますが…




