ふたりきり Ⅴ
「『刹那』はわんこ、『リサイクル』は私が貰うです。『巨腕召喚』はちょっと使いにくそうですし『魂への干渉』で少し弄った後にアンフェにでも渡すです」
「わん!」
『宝物庫』の3つの宝であるスキル書を持ちながら、その保有者を吟味する雫。その後ろには、扉が爆発で消し飛んだような門が3つ並んでいた。
本来ならば開けられる門は1つである。しかし雫は壁に書かれた文言を見たとき、開ける扉を選択せずに門を通れるようにすればいいのではないか、と思い付いてしまったのだった。
「それにしてもです。思ったより門が貧弱だったです。宝物庫の宝を守る門ならもう少し堅牢だと良いと思うです」
「くぅん」
「そうです?まだまだです」
今回雫が門の爆破に使用したボムの名前は『絶壊』。あらゆる耐性の無効化と、HPではなく耐久値を削るということに特化した代物である。そんなボムを使用しておいて、貧弱とはどの口が言っているのだろうとわんこは思った。
「…まあいいです。そろそろ帰るです」
「わん!」
とは言えここでやるべきことは終わった。ユニークスキルが3つに、精巧な機械人形が幾つも手に入った。魔族王の『宝物庫』としては何だか物足りない気もするが、成果とすると十分であろう。そう考えた雫たちはボス部屋から出た。
そして来た道を帰ろうとした時、ふと後ろのボス部屋を振り返る。すると雫の目には1つの門が見えた。そこは先程まで爆発により無惨な姿の3つの門があった壁だ。それらの門は消え、新たな門が出現していた。
「わんこ、見ろです」
「わん…わふっ!」
「わんこも気が付かないレベルで切り替わったですね。とすると運が良かったかもです…でももう『絶壊』の在庫がねーです」
「………わん!」
「開ける権利です? ああ、あれってもしかしてこれにも有効なんです?」
「くぅん。わんわん!」
「そうですね。やってみるです」
爆破でこじ開ける発想しか無かった雫だが、わんこの提案により開ける門の選択権のことを思い出し試してみることにする。
すると門は見事に開いた。門の中を見ると貴重な武具やアイテム、素材などが収納されていた。実質的にはここにある代物が宝物庫の宝なのだろう。
そしてその部屋の奥には、古びた机があった。その机の上には書き置きが残されていた。
【守護者を倒した豪傑な者よ。宝門を選ばず部屋を出た謙虚な者よ。門の出現に気がついた聡明な者よ。汝こそが次代の主に相応しい】
そう書かれた書き置きを見た瞬間、アナウンスが聞こえてくる。
【サブクエスト『宝物庫の継承』が達成されました。称号『宝物庫の主』を取得しました。サブストーリー『魔族王の遊具』は進行します。報酬として『マスターキー』を入手しました】
「おお、やったです」
「わん!」
「私は豪傑でも謙虚でも聡明でも無いですけど」
「くぅん」
ここに豪傑な者を連れ、強欲で幸運な者が『宝物庫の主』を継承するのだった。
予想外の展開が面白いですとか言われてて調子に乗ってたら
聡い読者さんに、門爆破がバレてて…




