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屍術師の悲哀 Ⅴ

 結果として骨郎は、『万骨創造』の使いすぎによるカルシウム不足に陥ったところを、ボムによって爆破され霧散した。主な敗因は的になるだけのスケルトン・ジャイアントを最初に何体も創造してしまったことであった。

 とはいえ雫たちもそれなりのダメージは負った。主力を欠き、ダメージの大半が雫が間違えて放った範囲攻撃ボムの余波だったとしても、程々に強敵だったと言えよう。


「やっぱり咄嗟だと間違えるです。気を付けなくちゃです」

「ホントですよ! アンフェさんとシロさんの防御が間に合って無かったら、全員死んでましたよ」

「びっくり♪」

「わんにいとてつにいのありがたみがわかる」


 雫の「あ、やべです」の言葉を聞き逃さず瞬時に防御態勢を取った二人は、さすがに雫歴が長いだけあった。もしアンフェとシロが死んでいたら、『死併せ』で守られていた雫も連鎖的に死ぬため、本当にギリギリであった。


「コッコッコッ。『神骨殿』モ『黒骨帝』モ出サズシテ負ケテシマッタ。完敗デス」

「本気を出させる前に倒したかったですから、ある意味予定通りだったです?」

「それは違いますよ」

「ソレデ、コンナ辺鄙ナ場所ニ何用カ?」

「あの、吸血鬼の強化ができる者がここにいると聞いたんですが…」

「ホウ。ハーデス様ノ客カ。ナラバ案内シヨウ」


 そう言って骨郎は雫たちを連れて『エレボス』に入って行った。


『エレボス』内を歩いている者たちは全員、不気味な見た目をしていた。


「ココノ住人ハ、私ヲ含メ全員ハーデス様ノ成功作デス。逆ニ『エレボスへの旧街道』ニハ失敗作ガ溢レテマス」

「あれが失敗作。…その割には住人の中にあまり強そうじゃない人がいる気が」

「アア、成功トハ、強サデ決定シテナイノデ」

「…?」

「詳シクハハーデス様ニ。ココデス」


 骨郎が連れてきたのは、普通の一軒家。ここに『屍術師』がいるとは思えないほどなんの変哲も無い場所であった。


「ハーデス様。オ客様デス」

「………」

「混血吸血鬼ガ来客サレマシタ」

「!!」


 最初の言葉には一切の反応が無かったにも関わらず、混血吸血鬼という単語が出た瞬間、家の中からドタバタという物音が聞こえ、ものの数秒で雫たちの前にこの家の主が姿を現した。


「混血吸血鬼とは、お前だな!」

「は、はい」

「フムフム。混血種は特定条件でしか生まれんからな。よいサンプルになりそうだ」


 グイグイくる男に、アイは気圧され雫はドン引いていた。そんな空気を察してか骨郎が男に話しかける。


「ハーデス様。彼女ハ」

「純血種への進化だろう? 引き受けよう。代わりに血液や肉片など幾つか貰うがな」

「な、なんで」

「俺のところに来る輩など吸血鬼になりたい連中だけだ。混血種が来るのは珍しいがな。だが1つ問題がある」


 話が早い。これならすぐに目的が達成できると思ったら、問題があると言う。


「吸血鬼の血を濃くするためには、吸血鬼の因子が必要だ。ただその因子を造るために必要な素材が1つ、不足してる」

「なんです?」

「上位存在の『血液』だ。『龍の血』であれば充分、お前を純血種にできるだろうが今ちょうど切らしているんだ」

「…お使いクエスト」

「だからそれを採ってきてくれないか?」


 アイがボソッと呟く。その言葉の通りハーデスは雫たちにお使いを頼んできた。

『龍の血』など面倒この上ないお使いだ。本来なら断りたい。しかし今回ばかりは問題無い。


「私持ってるです。えーと血液、血液…これです」

「え、主、悪いですよ」

「面倒は御免ですからいいです」


 雫はちょうど所持していた『血液』をハーデスに手渡す。


「なら早速、取り掛かるぞ。まずは採取からだ!」

「え、えーー」


『血液』を受け取ったハーデスはアイの手を引っ張り奥に入っていってしまった。


「どのくらい掛かるです?」

「ハイ。最低デ1日デスネ」

「なら帰るです。アイに言っといてくれです」


 そう言って雫たちの手伝いは終わった。


 帰り道。シロがとあることを思い出す。


「あるじ、このまえ『龍の血』とかのそざいぜんぶなくなったっていってなかった?」

「うんです? いやでも素材集めとかしたですし」

「でも、それもつかっちゃったんじゃ?」

「確かにです。ならあれって何だったです?」


 雫は雑に血液という文字を見て取り出していた事を思い出す。ただ確かに血液などは大体、『肉体』造りとその後の魔族王との戦いの準備で消費してる。とすればハーデスに渡したのが、何処で手に入れた物か分からない。


「もしかしたらどっかの雑魚モンスターのドロップアイテムだったかもです」

「まずい♪」

「…今度あった時に謝罪するです」


 先ほどボムでもやらかした取り出しミスを、続けてやってしまったため、素直に反省する雫であった。


【『屍術師の悲哀』が達成されました。『龍の血』の代わりに『魔族王の血液』が使用されました。PN『邪悪な瞳』は混血吸血鬼からユニーク種『紅餓王姫』へ進化します】


悲哀要素は最高の成果が他者の力で達成されたこと…すみません。色々足してったら悲哀が行方不明になりました。


次から新章の予定だったんですが、予定通り時間が少し経過させて始まる『神国篇』をもうやるか、その間の時間を今回のようにゆるく過ごす『日常篇』を挟むか悩み中

日常篇はやっても短いとは思いますが…


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― 新着の感想 ―
[一言] 上位存在の血液ってことなら雫の血でもいけたかもしれないよねw
[一言] 骨郎の敗因は、骨粗鬆症かぁ。 スキルを使うために文字通り身を削るとか、体をはってますね。 スキル使用のためにHPではなく、最大HPを削ってたとかなら、 日常生活で常に骨粗鬆症とかだと歩い…
[一言] 『魔族王の血液』かぁ。 そうなると、プレイヤーが間接的に魔族王の血縁関係ということになるのかな? ついでに魔族王絡みだとすると、 アイも雫のプレイヤーに於ける眷属扱いとか、 NPC的にとっ…
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