閑話 魔族王を狙う者
魔族王の席が空いた。
この一報は魔国中に公布された。これを聞いた多くの魔族は、自身の地位向上のチャンスだと勘違いし、一部の聡い魔族は新たなる強者の誕生に笑みを浮かべた。
元魔族王のサタンがその席を守っているとはいえ、今まではそのサタンが居なく、魔族王を目指すこともできなかったが、今はサタンを倒せば自分が魔族王へと至れる。しかも魔族最強と謳われていたサタンだが、何処かの誰かに敗れたのだ。実は噂は過大評価ではないか。これは千載一遇のチャンスなのだ。と多くの魔族は思った。
これはサタンの実力を良く知らないからこその勘違いでもあった。
しかしサタンの強さを良く知る、一部の魔族たちは突如として現れ、魔族王の席を放棄した新たな強者『魔神』に興味津々であった。彼らは直ぐ様、『魔神』の情報を集め出す。これによって魔国にどんどんと雫が浸透していくことになる。
そして、魔族以外にも『魔族王』に興味津々な者が1人。
「サタンにです? 無理じゃないです? 私は戦闘について素人ですけど、アイがわんこと鉄ちゃんを相手にして勝てるとは思えんです」
「それは…難しそうですね。でも挑戦はしてみます」
「そうです? まあそれなら応援するです。何か欲しい武器とかあったら言えです」
「は、はい。ありがとうございます雫さん」
『邪悪な瞳』こと黒井瞳。彼女は虎視眈々と『魔族王』の称号を狙っていた。現実だとゲームのような痛さは薄れオドオドしてるが、これでもソロプレイヤーではトップクラスの実力者なのだ。
「そういえば、クラスに友達はできたです?」
「い、いえ」
「別に私もほとんどいないですし、どうでもいいんですけど。この家に来る度に、おばさんから大歓迎されるのは疲れるです」
「ご、ごめんなさい。新しいクラスは緊張して」
「だから別にいいです。というか私にはアレ無しでも話せてるですし、他の人でも何とかならんです?」
アイと仲良くなり、初めて家に遊びに行ったときよっぽど珍しかったのか凄い歓迎を受けた。それから何度か来ているがそれが毎回続くのだ。
しかし雫も人の事をとやかく言えるほど交遊関係が広くない。自分の母も友達が遊びに来たと知れば喜ぶだろう。とは言えアイは極端に狭いのだが。
「我は孤高の存在。ならば友人など不要」
「それ前におばさんの前で言って泣かれかけたの忘れたです? まあその感じは極端ですけど、もう少し人当たり良い感じを演じたら、話せるんじゃないです?」
「そ、そうかな? アハハ。…ムズかしいですよ」
「まあそんな簡単じゃ無いですね。気長にやるです。じゃあそろそろ勉強終えてゲームやるです?」
「は、はい!」
仲良し度が上がってる雫とアイであった。




