二盾流
『絶道』を進んでいた雫たちだが、ボスフィールドには侵入不可であった。別パーティーであるアテナたちが現在も戦闘中であるためらしい。ここはレイド申請を断ったデメリットである。ただ入れはしないが戦闘を観戦することはできる様なので、アテナたちの奮闘を観戦することにした。
『不落王』アテナと『絶壁王』ガルジアの戦闘は一言で圧倒的であった。アテナには、付与魔導師のアテネと龍形態を使いこなすジークが付いている。それでもガルジアには遠く及ばない。
雫たちが観戦しだしたとき、既にアテネの姿は無く、ジークも龍のまま見えない壁に閉じ込められ身動きが取れぬ状況にあった。ジークは壁に身体を激突させ続け脱出を試みているが、まだ捕らわれのままだろう。
実質、アテナとガルジアの一騎討ち状態。雫からはアテナが今どんな空間付与をしているかは分からないが、ガルジアの見た目的に『物理攻撃無効』だろうか。
そんなガルジアの装備は全身鎧に両手に別々の盾を持つ、ガチガチに防御重視の構成。これでどうやってジークを閉じ込めたのか雫は疑問に思うが、直ぐに答えが見られた。
「ほほ、まだまだ荒削りだの。これでは『ダイダロス』が心配じゃ、のっ!」
「…うるさい」
ガルジアが右の盾を突き出すと、その延長線上に見えない壁が出現するようで、アテナの魔法攻撃がその壁に阻まれる。まあどうやればジークを閉じ込められるかはよく分からないが。
「つまりです。壁を出す盾ともう1つの盾でアテナたちを追い詰めてるです?」
「すご いね♪」
雫たちが感心してると、漸くジークが壁から抜け出す。そして今までの鬱憤を晴らすかのようにブレスを吐き出す。
「グギャァアァァ!!」
「ほう。中々気合いの込められた攻撃じゃの!」
壁を出して防ぐかと思われたが、何もしないガルジアにブレスが直撃した。そう思われた瞬間、ガルジアはまたもや右の盾を出す。
「ガォア!?」
「ほれ、お返しじゃ」
するとブレスは向きを変え、放った本人のジークの元に戻っていく。全力のブレスを吐き出し隙だらけのジークは、防御もままならずに自身のブレスに焼かれてしまう。
雫は驚きつつもガルジアを凝視する。するとガルジアが右手に持っていた筈の盾が、いつの間にか変更されていた。
「鉄ちゃん、気が付いたです? 盾が変わってるです」
「………」
「マジです? 見逃してたです。めちゃ早いですね」
少し目を離した隙に、壁を出す盾から攻撃を反射する盾に装備変更していた。普通ならそんなに早く装備変更はできない筈である。となるとそういったスキルやアイテムを保有しているのかもしれない。
それからもガルジアは様々な効果を持つ盾を、場面に応じて使い分け、アテナを翻弄していった。本来なら空間付与により地の利を強制的に奪えるアテナも、刻一刻とスタイルを変化させるガルジアに劣勢を強いられた。
そして最期は、両手に不可視の壁生成の盾を装備したガルジアの『ダブルシールドバッシュ』による圧殺で決着が付いた。
「ふむ。ディアボロスは兎も角、カムイまでやられたか。あやつらもまだまだじゃの。お嬢さんもそう思わんか?」
「知らんです」
「ほほ、これは手厳しいの」
アテナ家族との戦闘を終えたばかりとは思えないほどの余裕を見せるガルジア。
「少し休むです?」
「お嬢さん方も一戦交えた後じゃろ? そんな気遣いは無用。きなされ」
「ならそうするです」
それを合図に『絶道』での第2戦が開始するのだった。




