魔王の祭壇
話は雫が孤児院に帰る直前に遡る。
「わんわん!」
「わかったです。じゃあ進めるだけ進めです」
雫は戻り、アンフェも『地下街』で少しやりたいことが残ってると言うのでここにいる予定だったが、わんこたちは先に進むと言う。
ただナルタルやアテナからの情報によればここから『破壊王』が治める都市は遠い。到着だけで一週間は掛かるだろうとのことだ。つまりこれ以上のクエスト進行は難しいことが予想される。そんなときルクアの秘書さんが雫たちに話し掛けてくる。
「シズ様。わんこ様方は今から『破壊王』ソドム様に会いに終わりの街『ゴモラ』に向かわれるとのことですが」
「街の名前は知らんですけど、そうです」
「それならば『魔王の祭壇』に向かわれて見るのはいかがですか?」
また聞き慣れない言葉が出てきた。
「どこです?」
「歴代の魔王様方を奉っている場所で、魔王様がお隠れになる前に最後に立ち寄ったとされる場所です」
「そこに行くと何かあるです?」
「いえ、ソドム様は『魔王の祭壇』に頻繁に足を運んでらっしゃるようで」
「そっちに行けば会えるです?」
「と言いますか、ソドム様は『ゴモラ』はソドム様以外の魔族が存在しない都市でして、ソドム様も殆ど『ゴモラ』にはいらっしゃらないのでそちらに向かわれるよりは会いやすいかと」
「そうなんです? そんな事アテナもナルタルも言って無かったですけど」
秘書さんの言葉を受け、雫は情報提供者の1人であるアテナを見る。
「言いにくいですが、アテナ様もナルタル様もあまり他所の情報に疎い部分が見受けられますので」
「確かにです」
言われてみれば情報提供者であった2人は情勢という面では信頼性に欠ける。ルクアなどが良い例だが身分の高さと情報の信頼性は比例しないということである。
「じゃあその『魔王の祭壇』に行けば会えるかもです?」
「そうですね。ソドム様は各地を飛び回っているとの噂ですので確実にとはいきませんが、『ゴモラ』に行くよりは確率は高いと思います」
「わかったです。わんこ?」
「わんわん!」
わんこたちの目的地は終わりの街『ゴモラ』から『魔王の祭壇』に決定した。ただ『ゴモラ』よりは近いとは言え『魔王の祭壇』もここからそれなりに距離がある。加えて『魔王の祭壇』までの道程には今まで以上に強力なモンスターたちが闊歩している。たどり着くのも一苦労だろう。
「取り敢えずわんこたちは『魔王の祭壇』まで行ってくれです。『破壊王』に会えたら倒してもいいですけど…何となくそれじゃ駄目な気もするです」
「くぅん?」
「いや、何でもないです。わんこたちの好きなようにしていいです。頑張ってくれです」
「わんわん!」
こうして雫は孤児院に戻り『付与錬成』の研究に勤しみ、わんこたちは『魔王の祭壇』へと向かうのだった。




