龍となった日
アテナとの戦闘を終えた鉄ちゃんは『幻鐵龍化』を解除する。すると大きさはあまり変わらないが、姿に多少の変化があった小鉄たちが雫の元に駆け寄ってくる。
「…そういえば鉄ちゃんが龍神に成ってから小鉄たちとは会って無かったです。お前たちも進化してたですか」
「ガウガゥ」
本当ならもう少し早く登場させても良かったのだが、鉄ちゃんが龍神に進化するときかなりの時間が掛かったように、小鉄たちも幼いながら龍へ至るのに相応の時間が必要であったため、お披露目が遅れたのだという。
雫が小鉄たちとの再会を喜んでいると、アテナが復活してくる。
「龍人ではなく神。納得」
「…そう言えば鉄ちゃんと似てるですけど、何でなんです?」
「似てる? 父が龍だから」
「お父さんが龍です?」
そう言われても雫にはあまりイメージが沸かない。雫が首を傾げていると入口の門が開く音がして誰かが入ってくる。
「その話は私たちがしましょう。魔国王の使者さん?」
「ガウァ!」
「…父さん。母さん」
入ってきたのはアテナに似た女性と龍状態の鉄ちゃんくらいに大きな龍であった。アテナの発言から彼女たちがアテナの両親なのだろう。そんな2人を雫はよく観察する。そして
「この2人が両親ですか。だから鉄ちゃんに似てたですね。分かったです」
「わふっ!?」
何故か納得する。雫の中で何かが合致したのだろう。
そんなことをしているとアテナの母がアテナに話し掛ける。
「アテナ。負けてしまったのですね。お父さんが龍に戻ったからすぐに分かったわ。でも気に病まないで。彼女たちはあのナルタム様を倒した猛者なのだから」
「そう」
「…ああ、取り敢えずお父さんを元に戻して上げてくれるかしら?」
「あ、はい。父さんごめん」
「ガウァ」
アテナは父親に『スキル効果無効』を付与する。すると、どういう訳か龍だった父親は、人型の魔族に変化していく。魔族に戻った男性は肌に鱗が生えており、アテナの龍要素は彼由来だと分かる。
そんな展開に雫たちが置いてきぼりにされていると、それに気付いたアテナ母は、
「これについても含めて話をさせていただければと思います」
と言うのだった。それを聞いた雫はまた長くなりそうだという感情が表に出てしまい、わんこに諌められるのだった。
アテナの父ジークは亜人種の専用スキルである『獣化』を研究しているチームに所属していた。そして優秀であったジークは、『獣化』の中でもより強力な『龍化』の研究を任されることとなった。
研究のコンセプトは単純で龍の因子を取り込むというモノであった。ただ龍の因子は生半可な者では耐えきれない。そのためジークが取り込む役をすることとなった。
結果として研究は成功した。ジークは徐々に龍化していき、最後には完全に龍となった。『龍化』スキルも入手した。しかし研究は不完全であった。予想では『龍化』を入手すれば龍の因子を完全に制御できるようになり、魔族と龍の2つの姿を自由に変えられると考えていた。しかし手に入れた『龍化』はパッシブスキル。常時発動型のスキルであった。それ以降、彼は龍として生きているのだという。しかも龍の因子を制御できないため龍形態では録に戦闘も出来ないのだという。
「妻と娘がこの不完全な『龍化』を封じてくれるから魔族の姿をして生活してるがね。やはりスキルの入手方法に何か不足があったか…」
ジークはぶつぶつ考え込んでしまう。
「ごめんなさいね。彼は研究のことになるといつもこうだから。それでここからが本題なんだけど、貴方たちは人魔大戦にアテナを参戦させるためにここに来たのよね?」
「えです? …ああ、そうだった気もするです」
一瞬、何の事か分からなくなる雫は、言われて何とか目的を思い出す。
「…そうよね。それで今話した通り、アテナは夫に定期的に付与魔法を掛けないといけないの」
「はぁです」
「かといって戦場に夫を連れていくことも難しいの。私が何を言っているかわかるかしら?」
暗に娘は人魔大戦には参加できないと言ってくるアテナ母。わかるかと問われれば、これまで話し半分に聞いていた雫に彼女の意図が伝わる筈もない。しかし雫にも理解できたことがある。
「分かったです」
「そう。わかっていただけたみたいね。じゃあ…」
「不完全な『龍化』が完全な『龍化』になればいいですね」
「そう。完全なりゅう…か?」
それはジークは完全な『龍化』が無くて困っている。それがあればアテナも嬉しい。それであった。
そうと決まったら、即行動の雫は早速ジーク内の『龍化』を調べ始めるのだった。
【『四天王の平定』の条件の一部が達成されました。国別ストーリー『魔族王の復活』は進行します。また特殊条件が達成されたため、ユニット『不落王アテナ(完全体)』『付与魔導師アテネ』『魔龍ジーク』が解放されました】




