貴族の怖さ
魔族の少女が『貴族街』に行けるという情報に懐疑的なゴルディーたち。彼らが執拗に追求すると少女は怯えながらも説明してくれる。
曰く少女の家が『貴族街』にあるという。本来なら『繁華街』に来るときはいつも護衛などが周りを固めているのだが、護衛の目を盗んで1人になったところを運悪く拐いに捕まったのだと言う。つまり眉唾物の貴族を助けて『貴族街』に入れてもらうということが、実際に起ころうとしていた。
「てことはこの餓鬼、『貴族街』の令嬢ってことか。ヤベーのに手を出しちまった…」
ゴルディーたちチンピラ衆の顔が青ざめていく。『貴族街』に住んでいる子供。これ程怖いものは無いだろう。何故なら子供の保護者は『貴族街』ほどの難易度の迷宮で、子供という弱者を抱えても大丈夫という確固たる実力を有しているということであるためだ。少女をこのまま剣闘士として使っていたら『地下街』そのものが失くなっていたことさえ考えられる。
「…お前たちの自業自得です。それでも一番悪いのはコイツを拐った奴です」
「その論理が通用するところじゃ無いんですよ。拐いは勿論、俺たち含め断罪されるのがオチですよ。アイツらは取り敢えずぶん殴ってから話を聞くんですぜ」
『貴族街』に住めるほどの強者であるため魔国に染まりきった考えをする者が多いのだと言う。
「そ、そんなことない!」
「そりゃ、お前に見せる顔は違うだろうが…」
「まったく、子どもの前で親を貶すなです。何事にも例外はあるです」
「ぐすん…パパたち、お姉さんに似て優しいもん」
「そうですか。なら安心です」
そうやって振り替えるとゴルディーたちは更に青ざめている。よく見ればわんこたちも天を仰いでいる。少女にとっては雫と似ているは褒め言葉でも、彼らにとっては悲報なのだ。
「わんこ? どうしたです?」
「わふ! くぅん」
「…まあいいです。まあでも心配ならわんこたちが拐いから助けたことにすれば良いです。どうです?」
「う、うん。私はそれで良いよ」
周りの反応に納得はいっていない雫だが、このままでは話が進まないので都合の良い話をでっち上げることにした。
「わんこたちも上手くフォローしろです。どうしようもなかったらこれ使って騙せです」
強者に嘘をつくのは意外に難易度が高い。しかも身分が高い者は嘘を見破るアイテム何かも持っている場合がある。流石に娘にそれを使うとは思えないが念には念を入れるということで雫はわんこに『偽善の鈴』を渡す。これは自分以外に都合が良い嘘ほど騙せるという思考誘導系のアイテムである。
「疑われてたり、嘘発見アイテムを使われそうなら使えです。そうしたら疑うとかそういう思考が無くなる筈です」
「…わん!」
中々に怖いアイテムが使わずに済むことを願いながらわんこたちは出発する。
「よしです。とりあえず私はここを改造するです」
残った雫とアンフェ、ここを管理する予定のエリンによる『地下街』改造計画も始まるのだった。
先週、今週と忙しく、中々時間が。次回も少し遅れます




