閑話 雫の居ぬ間
短めです。
魔都を越えた先には『魔大陸』や魔国に出現する魔族のワンランク上の実力者たちが闊歩している。しかしわんこや鉄ちゃんを止められる程では無いため、魔国到着から約1週間で四天王の1人が治める都市の手前の街までたどり着いていた。
ここまで順調に来ていたわんこと鉄ちゃんだが今日は訳あってのんびり進んでいた。
「でもめずらしいよ。アンねえがあるじからはなれてくるなんて」
「うる さい たま には ある♪」
今日は雫とラスを除く全メンバーで進んでいたのだ。つまりアンフェも来ているのだ。しかもアンフェは天使長にランクアップしたことによりスキル『人気者』が『スーパースター』に進化しており、希少で強い魔族をたくさん引き寄せるようになっており必然的にゆっくりになる。
「それ いう なら♪ わこ ひと がた♪」
「わんにいはあるじいないと、ひとがたおおいよ。ね、てつにい?」
「…………そうだな」
「てつ もか♪ へん なの♪」
「どっちもあるじいるとねこかぶるよね」
「うるさい。アンは兎も角、お前もそうだろ」
雫には各自に求めるキャラがある。わんこであれば忠犬、鉄ちゃんなら寡黙などだ。それは出会ったときのそれに由来している。そのためわんこたちもそれを保とうとしている時があり、雫がいないとその反動が出ることがある。
またそれとは別に雫がいないときメンバー間での会話が多い。これは単純に雫とわんこたちは以心伝心であるがメンバー間ではそうではない。つまり雫を介して意思疏通が可能となっていると言える。雫が理解したことは全員に伝わり1人が理解したことは雫に伝わった後で全員にとの図式なのだ。雫がいれば会話をする必要が最小限になる一方で雫がいなければわんこの犬言葉や鉄ちゃんの無言での会話が不可能となる。
そのためいつも以上に会話は弾む。みんな雫がいるときとは別な感じでイキイキしてる。
「わんにいもてつにいもあるじさえよければってかんじ」
「そう だね♪」
「アンにだけは言われたくない」
「…………はぁ」
「なん だと♪」
「うわーアンねえがおこった」
とは言えこれはこの面子だからこそであるのは間違いない。ここに瞳や煉歌などの他人がいれば鉄ちゃんは喋らないし、アンフェも付いてはこなかっただろう。わんこやシロもここまで気安い雰囲気は出さない。長い間、共に雫を支え苦楽を過ごしてきたからこそなのだ。
4人はいつもよりもゆっくりと進んでいくのだった。




