楽して魔国へ行こう
雫と瞳を除く『神の雫』のメンバーが帝国と聖国の観光を終えてクランハウスの孤児院に戻ってくると珍しい人物が彼女たちを待っていた。
「わんこ殿か。久しいな」
「お久しぶり」
「あれ?わんこだけなのか。くらますたちは?」
「マスターはアイテムの補充中。アンフェとシロは庭で遊んでる。鉄は知らない」
珍しく人の姿をしているわんこ。ただ彼女たちは特に驚く様子もなく受け入れていた。というのもわんこは雫以外のメンバーと行動するときは時々ではあるが人型になっていた。そうでもしないとコミュニケーションがとれないのでしょうが無いのだ。とは言えわんこも雫が自分の人型がしっくりきていないことは分かっているので、人化しなくていいときはしないスタイルなので珍しいことは珍しい。
「で、わんこは何で人化してるんだ?」
「マスターが魔国行きの方法を話す。その前段階で魔大陸について話しておけと」
「後で魔国への行き方を話してくれんならその時いっしょに話してくれればいいんじゃない?」
「マスターは敵の強さを具体的には話せない」
「確かに」
相手の強さを感覚的に測るのを得意とする雫であるが、それを言語化して具体的に話すことは苦手である。と言うかHPやMP、ステータスも何となくで捉えている雫に敵の詳細を語るなど荷が重い役割なのである。そのため納得した煉歌たちは黙ってわんこの話を聞くことになった。
わんこがある程度の情報を語り終えた頃、アイテム補充を済ませた雫がやって来た。それを察知したわんこは人化を解く。
「わんこ説明ご苦労様です」
「わんわん」
「それで私たちが魔国へ行く方法だっけ?
わんこの話聞く限りじや無理っぽいんだけど。特に魔印、だっけを取るルートは」
魔国へ行くルートは雫が通った『魔大陸』の他に第1の街から行くのと帝国、聖国から行くルートが存在する。難易度に各ルートの長さが反比例しているようで第1の街から行くルートは兎に角長いらしい。
「前に友達に聞いたんですけど初心者とか生産職なんかを同じ街に呼ぶ裏技があるらしいんです」
「ああ、『召集弾』を使う方法だよね。でもあれってちょっと街に滞在するとかその街を拠点に動かないならいいけど、活動するなら駄目じゃない?」
『召集弾』は使うとパーティーメンバーを自分と同じ位置に召集できるアイテムであり、それを使ってレベルの低いプレイヤーや生産職プレイヤーなどを先の街に連れていくという裏技なのだが、正規の方法で入っていないためその街から出ると戻れず結局はフィールドボスを倒さないといけないため、街から動くことがほとんどない生産職運搬の1手段に過ぎないというのが今の見方であった。
「それで『魔国』まで来て逆走してボスだけ倒すです。まあこの方法だと『魔印』持ちがいちゃ駄目らしいですからお前たちだけでボス戦になるですけど」
「そうなんだ。それだとやっぱり難しいかな?」
『魔印』を持っているとディアボロス配下の魔族との戦闘が免除されるようで他のルートのボス戦もせずに通過できるのだった。
「だから私が提案するのは魔王に直接あって通行証を貰っちゃおう作戦です」
「え、それって大丈夫なの?」
「わからんです。ただこの作戦をやるためにお前たちには2つの中から1つ選んでほしいです」
「2つ?何と何?」
「寄生されるか武器化するかです」




