軍隊襲撃
『鉄龍王』から『龍神 鉄』へ進化した鉄ちゃん。雫のスキルも『鉄龍使役』から『龍神使役』と変化していた。しかしそういった種族に詳しくない雫からすれば強くなったことくらいしかわからない。逆に研究者連中は翌日、ログインした雫に鉄ちゃんを召喚しろと迫ってくるほどの熱狂ぷりである。
「龍神の存在が確認されているのは今のところ2柱じゃ。魔国より更に北に行った竜王国の神殿と王国側にある聖国の神代迷宮の最奥にいると言われている。しかし実在するのかは不明じゃ」
龍神に関して熱弁を奮っている。しかしそういう話は聞き飽きているので、早々に第3のフィールドに行くことにした。引き留めてくる研究者たちに再度ここに来るという口約束をし出発するのだった。
『魔大陸』第3のフィールドは特に別称などは無く辺り一面荒れ果てた普通の荒野であった。しかしそのフィールドには見慣れない光景が広がっていた。通常、フィールドに出現するモンスターは単独で、多くても数匹で出現する。戦闘も良くて前衛と後衛に別れた動きをするくらいである。そんな中、現在広がっている光景は軍隊規模の統率された魔族たちが隊列を組みながら此方に向かってくるという、普通なら考えられない光景である。
「アンフェの『人気者』が働きすぎたときと同じくらいの数です…」
「ぁ~ぅ」
「わかってるです。それでどうするです?誰もやらないなら私の魔砲が火を吹くですけど?」
雫が『魔砲』を掲げる。これは今までの魔法銃のように魔力を消費してその分の攻撃を放つのとは異なり弾を飛ばすことに魔力を使用するのだ。つまりその飛ばす弾により攻撃が多様化される。昔ならいざ知らず『錬金術の極意』により『魔砲』に適した特殊弾の製造が可能な今ならではの装備と言える。
雫は今朝造ったばかりの『ボム弾』を放つ準備をする素振りを見せる。すると珍しいことに鉄ちゃんが雫の前に進む。
「鉄ちゃんがやるです?」
「……!」
「相手もまだ遠くにいるですし、やるなら今のうちにです」
雫がそう許可を出すと鉄ちゃんが軍の真ん中目掛けて『鉄龍砲』改め『龍神砲 鉄』を放った。見た目はそこまで変化していないため雫としては少し残念であった。しかし変化は見るものが見れば歴然である。そして、『龍神砲 鉄』が敵軍に直撃したことで起こる無惨な被害からも推察できた。
直撃した近接部隊はほぼ全滅し、余波に晒された遠距離部隊も半壊状態である。この軍団の一人ひとりが第1フィールドに出現した魔族ほどの強さを有しているとは到底思えないが、それでもここに出現する魔族が弱い筈がない。それを一度の攻撃のみで半壊させてしまうとは余程の威力だと言わざるを得ない。しかもかなりの遠距離からの砲撃でこれである。『鉄龍砲』ではとてもじゃないが再現できないだろう。ただ
「まだまだですね。やるならもっとドカーンって感じだといいです。頑張れです」
「……」
「どかーんだよてつにー」
それでも未だにパーティー内最高火力が雫であることに変わりは無く、いつもこれ以上の悲惨さを体験してる雫たちはさほど驚くこと無く終わる。龍神デビュー失敗の瞬間であった。
雫パーティーのあるあるネタですね




