騎乗錬成
三剣の1人を制限されていたボムを使って倒したことを叱られていた雫であったがその後、何とか許しを得た。雫が自爆付きゴーレムを造っていたこともだが、そもそもあの場所はまだ鉄ちゃんの領域内であり雫が対処する必要は無かった。それは爆発にアンフェの防御が間に合ったことからも伺える。そういった事実を錬成に夢中で失念していたため余計説教が長引いたのだった。
「わんわん!」
「はいです。もうわかってるですから何度も言うなです。とりあえずボムは使わないです」
とはいえボムを使わない雫は道中やることがない。いつもならわんこの影の中で暇潰ししているのだが今回は未踏の地『魔大陸』の探索中である。わんこの本領が発揮できない状態では危険が多いのだ。そこで雫は初の試みをすることにした。
「わんこ!いま精製してるですから揺れるなです。あっまた揺れたです!」
「くぅん」
「しっかりしてくれです。わんこなら揺れずに動くくらい出来るです」
「……」
「ぉ~?」
「むりだー」
わんこに乗りながらの錬成。雫が影中にいた方がわんこも本領が発揮出来そうな試みではあるが、新フィールドにも飽きてきた雫にとってはちょうど良い娯楽であるようで鉄ちゃんたちに同情されつつもわんこは進むのであった。
わんこ乗り錬成も慣れてきて様々な物を造り出していく雫。雫が造る物は既製品の改良版か独自の品もしくは危険物に大別されが今、わんこの上で造られているのは紛れもなく危険物であった。
「くぅん」
「気にするなです。流石にわんこの背中で暴発させるようなことはしないです。それよりもそろそろチェックポイントに行きたいです。もうすぐ寝る時間ですし」
「わん!」
元気よく返事をするわんこであったが状況はそこまで良くは無かった。雫を気にしつつ移動し戦うためやりにくいということを除いても、敵魔族たちの動きがわんこたちに合わせてきているような違和感を感じる。戦っているうちに相手が此方の戦法を学びそれに応じて戦法を変えてくる事は良くあるが、出会った瞬間からそのような動きをする者が多いのだ。しかもそれは先に進むほど増えてくる。なかには『魔大陸』に入ってから三剣戦での暴発以外で戦ってすらいない雫からの攻撃を警戒する魔族すらいる。その動きは明らかに雫が高威力の遠距離攻撃を持っていることを確信するものであった。
「あるじ、やりにくい」
「何かに監視でもされてるですかね?
誰か分かるやつはいるです?」
「ぅ~ぃ~ぉーぇ?」
「蟲の目です?なんですそれ?」
アンフェは三剣の会話に出てきていた単語『蟲の目』を覚えていたが、そんなものを雫が覚えているはずもなく聞き返す。するとその返答は別のところから聞こえてくる。
「そう。ここら一帯は私の『蟲の目』が行き届いている。このフィールドで起こったことは全て私が視ているってことだ」
声の方向を見るとそこには1人の魔族が立っているのだった。




