プロローグ
ちょっと短いですが新章開始です
八咫烏との戦闘から早2ヶ月が経過した。その間に色々な事が起きたが、それらは今日の運営側の発表に比べれば些細な事だったと言える。今のVVOでは新機能やシステムの追加をアップデートによって行われてきた。しかし今日の発表で拡張パックの配布とそれによってどのような要素が追加されるのかが知らされることとなった。
そんな知らせが雫の耳に届いたのは学校の昼休みの事であった。いまどき、特に高校生ならばどこであろうと携帯端末が欠かせない時代、その波に二世代ほど乗り遅れている雫がそんな発表を知るすべはないため、いまどきの高校生である小枝から聞かされていた。
「何でも今までの舞台だった王国に加えて帝国、聖国、そして魔国の3つとそれらをつなぐフィールドが新たに追加されるんだって。詳しいことは今日の夜に発表されるけど、なんでも各国にクラン単位で属しての大規模戦闘とかもあるらしいよ。しずちゃんも盟主になったんでしょ?なら色々と決めなきゃだね」
「まあそうですけど、いまいちよくわからんです。まあとにかくその拡張なんたらで今までよりフィールドが大きくなって、色々できるようになったですってことです?」
「うーん。まあ間違いではないな」
「そもそもアップデートとの違いがわからんですし、どうでもいいです」
「私もそこら辺詳しくは無いからよくわかんないけどね。それでも今までにない要素が多数追加されるらしいし、凄い楽しみだよ」
なんだかいつもの倍テンションの高い小枝に付いていけてない雫の本音は、今まででも十分楽しめていたため別に拡張だか何だかで増えなくてもなと言うとこであり、機能が増えたところで十全に使いこなせない雫の悲しさがそこにある。そこら辺は一年間ゲームをプレイしてきたとは言えまだまだゲーマー連中とは確執のある部分でもあった。
「ところでその拡張はいつの予定なんです?」
「えーと今日の夜正式発表らしいけど取り敢えず朝の情報だと1週間から2週間後に配布されるらしいよ。今日から頑張らないとなー」
とは言え全く興味が無いわけでもないあたりは雫の変化が伺える。第10の街以降先に進めない状況のため偶にわんこたちとフィールドに出ることはあってもその頻度はかなり少なくなっており、密かに寂しがっていたわんこたちも喜ぶだろう。
「じゃあ私もそれに備えて色々と造っておくです」
「いや、それは…今まででも十分というか。しずちゃんが頑張りすぎるとちょっと…」
小枝に触発されてやる気になってきた雫を見て余計なことを言ったと、少し後悔する小枝であった。




