クランの新メンバー Ⅰ
ペースが取り戻せません
閻魔王を倒した数日後、雫がとある目的で自分のクローンを造っていた時、瞳が見知らぬ女の子を4名を雫の元に連れてきた。驚くことに彼女たちは雫が盟主を務めるクラン『神の雫』の加入希望者たちであった。
「驚いたです」
「そうですか?確かにいきなりですもんね」
「急に連れてきたのもですけど、アイにこんなに知り合いがいたことがです」
「えっと、知り合いと言うか…」
瞳は困ったような表情で後ろの少女たちを見る。
「はは、あのダークネス・アイさんがたじたじだよ。おもしろ。この人、ほぼ無言で喋っても中二語しかしないのに」
「アイのことよく知ってるですか?」
「知ってるっていうかソロ仲間って感じかな?ソロだと入れないフィールドの時に野良パーティー組んでるの。あとは掲示板かな? っと自己紹介がまだだったね。私は煉歌。よろしく」
「シズです」
こうして黙ってしまった瞳を放って簡易的な面接を始める。話してみると四人は雫や瞳よりもずっと社交的であまりソロでゲームするタイプには見えなかった。どちらかと言えばパーティーに入ってワイワイやってるイメージである。
「えーと、煉歌が『吟遊詩人』でパフェまふが『テイマー』、あまのまひとつが『工匠』、テディベアが『傀儡師』でいいですか?」
「それであってるよ。私とベアちゃんはジョブが、あまのまさんはステ振り、パフェ子は趣味のせいで固定パーティーとかクランに所属できないんだ」
「…よくわからんですけど四人でパーティー組めばいいんじゃないです?」
「それができればいいんだがね」
そう言って溜め息を吐くのは、この中で一番の年長者あまのまひとつ。彼女らの状況を纏めると、煉歌のジョブ『吟遊詩人』は歌や演奏によって味方にバフを、敵にデバフなどを与え補助する職業である。このジョブの長所は他の補助職よりも効果時間が長いことであるのだが、演奏中は禄に動けない、単独での戦闘力が乏しすぎるなどの欠点が目立ってしまう。そのため不人気職であり、それがこのジョブ一番の特色であるスキル『合奏団』の強みを打ち消している。このスキルの効果は複数人の音楽系スキルを重ねることで、普通ではあり得ないバフ、デバフを与えることができる。しかしそもそも音楽系スキルを持つ者が少なく、補助職だけを何人もパーティーに入れられない関係上、大規模レイド等なら活躍出来るかもしれないが、そういったことを行う本格的なクランには『吟遊詩人』などのジョブを持つ者がいる可能性は少ないため、今までソロで活動しているのだった。
「音楽は好きだし、ゲームで折角それができるジョブがあるんだからそれを選択したんだけどなー」
次にテディベアのジョブ『傀儡師』は人形版のテイマーのような物なのだが、このジョブの特色は人形を意のままに操れる点にある。しかしそもそも高性能な人形はあまり売られておらず売られていれば高い。そんな高価な人形で攻撃も防御も行うため消耗が激しく金が掛かるため、パーティーを組んでもすぐに厄介者扱いされてしまうらしい。
「まああたしのジョブはソロ向きといえばソロ向きだから」
そんなジョブのせいでソロを強いられている二人とは違い、ある意味自らソロに向かっているのがパフェまふとあまのまひとつである。
パフェまふは、無類の可愛い物好きであり『テイマー』としてテイムしているモンスターは軒並み、外見は可愛いが能力が低いマスコットキャラばかりであった。『テイマー』のため勿論、固定パーティーは組めず、エンジョイ勢と見られクランにも所属できないのだ。ただ『テイマー』として必要な指揮や運用の能力はずば抜けており、スペック差がかなりあるにもかかわらず、中堅テイマーに勝利できるくらいには強いらしい。
「可愛いは正義ですよ。でも強さも正義なんですよね…」
あまのまひとつはこのゲームの全てを楽しみたく戦闘も生産もどっちもやりたいと考えた結果、戦闘職が生産をするのはスキルの関係上無理だが、生産職が戦闘を行うのは可能だろうという考えに至り、純生産職でありながら戦闘が可能になるようにステータスを振り分けているため普通の生産職よりもステータス面で劣る。そして戦闘面では戦闘職にかなり劣るという中途半端なキャラになってしまったのだ。
「戦闘面はどうにもならんが、生産面ならトップクラスには及ばないが、そこらの奴らに負けるつもりはない。足りないステータスはPSでカバーしてる」
そんなわけで各者各様、色々な理由があってソロをしていることを理解した雫。しかしそれでも疑問が残る。
「何で私たちの所に来たです?確かアイはずっとソロやってたらしいですから貴女たちとあんまり面識あるようには見えんですけど?」
「それはね、まあ色々あるんだけど私たちはソロだけど、結構野良パーティー組むんだよ。ソロだとゲーム進められないし」
「はぁです」
「でもダークネス・アイは違う。ゲームの仕様でソロが無理な所以外ではずっとソロを貫いてた人何ですよ。そんなスーパーソロな人がクラン加入したって聞いたら興味わくじゃない。ソッコー頼み込んで連れてきてもらったの」
「…よくわからんですけど、アイがボッチを極めてたことはわかったです」
「うーん、ちょっと違う」
彼女たちの話し合いは続く。そして瞳はこの間、会話に参加できず未だにたじたじしてるのだった。




