エピローグ
「まさか陰神様の御使いだけでなく陽神様の御使いで有られる八咫烏様までテイムしてしまうとは、やはり我々とは次元が違う御方だ」
陽教の最高司祭であるロドンは称賛や感嘆、呆れなど様々な感情が入り交じった声色でそう呟く。そんなロドンの視線の先には頭の上にラスを乗せ、それに嫉妬したアンフェに肩をペシペシ叩かれている雫の姿があった。
「まあ街も元通りになってよかったです。私としては…ってアンフェ!ペシペシするなです。アンフェが大きくなっちゃったから乗れなくなったんですよ。我慢しろです」
「…ほほ。まあ儂の長話に付き合わせても悪いですから、そろそろ本題ですな。今回のお礼です受け取って下さい」
喧嘩を始めた雫たちを見たロドンは、遠い目をしながら、用意していた品を机上に置く。
「教会が保有する聖剣の一振り、『陽光刀剣』と聖鎧、『天道要塞』です」
「ふむふむ、これはすごいです。珍しいです」
雫は差し出された品をじっくりと観察し、そして静かに驚く。なぜならこの2つの装備はセット装備となっていた。セット装備は全ての装備を身に付けることで効果を発揮される類いの物で、雫の『叡智の到達者』やわんこの『焔龍の闇騎士』がそれに当たる。それらの装備は全てを装備することで真価を発揮するが、別々に装備してしまうと殆ど効果が失くなってしまうのが通常である。しかし今回の2つの装備は一つ一つが強力であり尚且つ、合わせることで更なる効果が追加されるようであった。
「うーん、これは色々と弄りたくなる代物です。もう少しやればわんこの新しい装備にも…っとじゃあ報酬としてありがたく貰うです」
「はいそうしてください」
こうして漸く『八咫烏の乱心』は終わったのであった。
先程まで燃えていたとは思えないくらい修復された街並みを見物しながら待っていると、漸くわんこたちの再召喚可能な時間が経過した。そのため召喚してみると、鉄ちゃんの方は何ら変わり無いのだがわんこの姿に明らかな変化があった。
「おお、また進化したですか?」
「…くぅん」
どうやらそうらしいのだが、わんことしては雫を残して倒れた事が負い目となりあまり喜べない様子である。
「やったですね。今回もわんこ頑張ってたですから。でもそれなら鉄ちゃんもかなり頑張ってたですけど、何でわんこだけなんです?」
あまり経験値というシステムに関心がない雫は、途中で倒れてしまったが今回大活躍であった鉄ちゃんに変化が無いことに疑問符を浮かべるのだった。
「………………」
「まあ次頑張ればいいです。アンフェやシロも頼むです」
「ぉ~ぉ!」
「わかった」
そんな会話をしている最中も浮かない顔つきのわんこ。進化してもふもふ感がアップした漆黒の尻尾も垂れ下がっている。しかしわんこが進化して至った種族は『夜闇帝狼』。遂に種族名から月が取れて、陰神の御使いから雫の守護者としての覚悟の証でもあるのだろう。
「わんこもいつまでも落ち込んで無いで、そろそろもふもふさせろです」
「くぅん。わんわん」
「ふふ、わんこが元気になったです。これからもよろしくです」
雫はそう笑顔で呟く。ゲームをしてる雫は前よりもずっと楽しそうである。この様子では雫たちの冒険はまだまだ続くようだ。
一応、書き始めた頃に考えていた最終までは書ききれました。ただ書いてる途中で書きたいことも出てきたのでまだまだ続きます。
次回は少し構想を練りつつ何個かやり残したことを閑話なりで書いたら、作中の時間を少し飛ばして新章に移行しようと思います。これからもよろしくお願いします。




