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戦う錬金術師です(涙目)  作者: 和ふー
第1章 王国編
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幻鉄龍化

氷の呪縛から解き放たれようとする八咫烏を見ながら鉄ちゃんは憤慨していた。それは八咫烏に対してであり、わんこに対してであり、自分自身に対してであった。いつからと聞かれれば最初からであったように、雫は否定するだろうがこのパーティーで一番信頼されているのはわんこである。それは雫たちだけでなく鉄ちゃん自身でさえそう感じていた。今だってそうである。鉄ちゃんが為す術なく溶かされた相手の対抗策を準備しているのはわんこであり、鉄ちゃんはその時間稼ぎをしている。そしてそれを心の中ではしょうがないと納得していることに腹が立っているのだった。


「……」

「うーん。まあ鉄ちゃんの判断なら別にいいです。好きにやれです」

「ぁ~ぉ~!」

「まかせろ」


そのため鉄ちゃんは雫たちに許可を求める。無論、わんこの奥の手のための時間稼ぎという役割は果たす。その上で鉄ちゃんは、守りに入るのではなく攻めに転じる気なのだ。簡単に言えばわんこの奥の手を披露する前に、自らの手で八咫烏を屠るつもりになったのであった。

それに何も奥の手を隠していたのはわんこだけではない。鉄ちゃんも今まで見せてなかったモノが存在する。『鋼龍化』はまだ小鉄たちが進化する前の時のスキルであり、合体する小鉄の数が多いほどその強化率も上昇するスキルであるが、小鉄が進化した結果この『鋼龍化』の上が追加された。その名も『幻鉄龍化』。小鉄たち全員と合体することでのみ発動するスキルであり、時間制限付きであるが莫大なステータスの上昇と、全ての小鉄たちの能力が使用できるスキルであった。

強力なスキルなだけにリスクも多く、小鉄たちが一人でも欠ければ使用できない使い勝手の悪さから今まで使われていなかったが、解凍が済み臨戦態勢の八咫烏を見て鉄ちゃんは発動した。そして


「ガアァァーーーーー!」


無口でシャイな鉄ちゃんが吼える。『龍の咆哮』と『王の威圧』の合わせ技である。その威力は八咫烏の構えを一瞬解く程の威力であった。その一瞬を突いて鉄ちゃんは接近する。本来は体重が重すぎて飛ぶことができない鉄ちゃんであるが、まぐたんの能力を応用することで空中飛行を可能としたのだった。


「ピィエェーーー」


しかし相手も硬直を解き、『灼熱』を浴びせてくる。いくら飛べるようになったと言えど空は八咫烏の住み家。慣れない鉄ちゃんは避ける間もなくその身を焼かれる。しかし先ほどと違い熔ける様子は無い。その理由はヒーとクーの能力、『求熱』と『放熱』そしてはくたくの能力にある。『求熱』で熱を吸収し、すぐに『放熱』する。そしてはくたくは小鉄たちの能力の無効化である。そのため八咫烏からの熱から鉄ちゃんからの熱に変化しただけだが、鉄ちゃんにとっては無害な熱に変わっていたのだった。


「………!」

「ピァーー」


ならば方法を変えるまでであると言わんばかりに、八咫烏は赤熱の火玉を生み出す。『太陽顕現/サンライズ』を発動したのだ。八咫烏に放出できる熱量の限界があるように、鉄ちゃんの『求熱』にも吸収できる熱量に限界はあるという考えからであった。

そんな莫大な熱量を前に鉄ちゃんは暢気に迎撃態勢を取っている。迎え撃つつもりだ。その火玉は先ほどや、最初の熱風とは桁違いの熱量を保有している。まともに相対すれば融解は免れないと推測できる。そんな赤熱に衝突した鉄ちゃんは、その身を少し焼かれ、溶かされたが平然としていた。


「ピェ?…ピェーッ!」

「………」


八咫烏の赤熱は『幻鉄龍化』で強化され、ヒーたちの能力で熱を多少無効化しても耐えれる物ではない。しかし『太陽顕現/サンライズ』は分類上、魔法に属するためミリーの『魔法反射』が適用される。反射にも限界があるため、鉄ちゃんも多少は焼かれたが、そのお陰でもう二人の能力も発動可能となる。

多少溶かされたが、今の鉄ちゃんならばその溶けた体さえも操れる。それはすいの能力『流体制御』である。そして溶けた体とは目に見える液体金属だけではない。蒸発した物も流体の一種である。


「ピェーピァーー!」

「………」


幻鉄龍の鱗は毒を多分に含んでいる。それこそどっくんのように。そして熱による防御も気体そのものを防ぐことはできないのだ。そしてどっくんと異なる点は自身の毒の無効化と、周囲の毒を操れる点である。

『幻鉄龍化』により相手の攻撃を耐えうる防御力と、相手に通用する攻撃を備えた鉄ちゃんは、徐々に八咫烏を追い詰めていくのだ。



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