装備更新
みんなの装備を強化しつつも、『魂への干渉』で自身とそして今、ちょうど近くにいるアンフェのスキルを弄る日々にも飽きてきた雫の元に数日ぶりに、ジョブレベルを上げ終えたわんこたちが帰還してきた。
「やっと戻ってきたです。じゃあこれから第9の街の『就職屋』に行って2ndジョブに就きに行くです。そうしたら第10の街に行くでいいです。文句無いですね?」
「わんわん!」
「………」
「ぉ~!」
「いいよ」
という事でそういった順序で進むことになった。その前にとりあえず預かっていた各人の装備の返却をする。
「まずはわんこですけど、わんこはこの前ちゃんと強化したですから、そこまで手は加えてないです。一応、わんこのステータスに合わせて最適化したり、属性強化とかはしたですけどね。『焔龍の闇騎士 改』です。」
「わん!」
性能面でもわんこの装備はまだ大丈夫な部類であるので限定的な強化に留まった。同様にアンフェもであった。
「『フェアリードレス』もこれで十分強かったです。だから他の装備品を造っておいたです。これで神聖魔法が使いやすくなると思うです」
「ぉ~ぅ」
雫はアンフェ用に造った『リングオブ・ホーリー』と『織天使の羽衣』を渡す。どちらも神聖属性の強化や発動補助など色々と便利な機能をつけてあった。妖精の装備品は難しく雫でさえ3rdジョブを取得するまで造れなかったほどだ。造るだけなら妖精サイズに造るだけなのだが、サイズを小さくすればその分性能も下がってしまうのだ。
本職の鍛冶師などが使う『サイズ変更』などを使えば問題ないが、雫にはそのような手段を使う能力が無いので放置していたのだ。しかし今回は就職したお陰で装備の質の向上は勿論のこと、神聖属性の強化に効果を限定したので、他の効果は乏しいが、その分アンフェにとっては十分な装備を造ることができた。
「次のシロは『妖魔街』で手に入れた素材とか『妖術』なんかを取り入れて造ってみたです」
「ふくかわいい」
「そうです?友達にシロみたいな狐はこれだって言われたからベースはこれにしたですけど、妖怪のシロに巫女装束っておかしいと思うです」
「そうなの?」
「まあ別にどうでもいいですか。名前は『巫っ女さん装束』らしいです」
シロの装備品の名前はベースとなる巫女装束の製作者が付けた名前らしい。おそらく通常ではあのような名前は付かないので名付け用のアイテムを使用したのだろう。主な効果は『妖術』と『仙術』への補正、魔法などの遠距離攻撃への耐性などであった。
最後は鉄ちゃんであるが、鉄ちゃんの装備は色々と悩まされた。色々な効果を付けることも可能なのだが、できれば鉄ちゃんには防御に徹して欲しいと言うのが雫の願いであった。そのため攻撃系の補正や、スキルなどのリソースを全て防御力上昇に費やした『愚者の鉄鎧』が完成した。ただこれだけでは鉄ちゃんの弱点はカバーできないので、雫はもう1つ特別な防具を用意していた。
「このごろ鉄ちゃんの防御力を無視した攻撃を使ってくることもあるです。だから鉄ちゃん以外の防御方法を造ってみたです。まあ普通の盾ですけど」
「……!」
雫が取り出したのは2枚の盾。しかし雫の言った通りの普通の盾では無い。取り敢えず浮いている点で普通では無い。そしてもう1つ。何か勝手に動いてる点が普通度を完全に失くしている。
そんな盾を見た鉄ちゃんが無言で説明を要求する。
「これは『念動』ってスキルで浮いてるです」
「…?」
「ああ、私がスキルを使ってるんじゃないです。この盾たちがスキルを使ってるです。…あれ?わからないですか。これは『意思ある防具』なんです。これなら盾を使ったこと無い鉄ちゃんでも安心です」
「……」
色々と言いたいことはあるが兎に角、普通の盾では無かったのであった。




