進化と成長
シロは雫と出会った時から色々な成長をしてきた。雪魔法を覚え、『妖術』や『仙術』を覚え、しかし今までずーとシロは幼体のままであった。しかし自身と同種であり、圧倒的に格上である玉藻を打ち倒したシロは遂に進化を遂げるのだった。と雫は思ったのだが、
「違うわね。あれは進化と似た現象なのだけど、どちらかと言えば『成長』の輝きね。」
「成長と進化って違うんですか?」
「進化は基本的に種族自体が変化するわ。下位種族から上位種族へ。でも成長は幼体から成体への変化だから種族が変わる訳ではないの。わたくしたち九尾の妖狐の上位種族なんてそうそう進化出来るモノではありませんわ。わたくしも妖狐から妖狐神に成れたのは何時だったかしら?」
シロの『成長』が終わるまで暇なので玉藻の話に耳を傾けてみる。するとシロと同種族かと思っていたが、玉藻は上位の種族のようであった。鉄ちゃんが鉄龍から鉄龍王となった進化と同じ系統の進化なのだろう。そうなると神格を宿している玉藻よりも上位が少なくともあと2名いるという話になる。となれば『妖魔街』の保有戦力は莫大であると言えるだろう。
「とは言えわたくしに勝てたのであれば大天狗殿にも良い勝負が出来ることでしょう。さすればこの街の長との談話の機会も訪れましょう。しかし長には勝負を仕掛けないことをおすすめしますわ。」
「…へーです。何か前も同じようなことを言われた気がするです。そんなに強いんです?」
酒天童子や玉藻も相当に強かった。そんな彼女たちとは比べ物にならないほどの相手、となると想像がつかないと言うのが正直なところだ。そんな雫の疑問に玉藻は首を横に振る。
「戦闘力、わたくしたちの観点から言えば『妖術』や『仙術』の力はそこまで差はないと思いますわ。ただあの御方は特殊なのです。我々妖魔街に住む妖怪を統べるだけの力を持ち合わせておられるのです。」
「特殊ですか。まあ私は温厚なのでそんなにすぐ手を出すようなことはしないです。」
「わふっ!」
「どうしたですわんこ?」
「…くうん。」
温厚な者は開幕爆撃などしないと思うわんこだが、そんな事を言えないため力なく鳴くしかない。
「それにしても妖怪のトップって誰なんですかね?あんまり妖怪には詳しく無いので分かんないです。」
「そうなのですか。となると名前を言ってもわかりませんか。そうなると、あの御方を一番表しているのは…この妖魔街の王であり審判者、ですわね。」
そんな話をしているとシロの『成長』光が止む。光が晴れて現れたシロの姿は今までよりも一回り大きくなっており、尻尾のもふもふ感も倍増であった。雫がそんな変貌を遂げたシロをまじまじと見ていると、
「コーン!」
シロが空中で1回転する。するとぼふっ、という効果音と共にシロの体が更なる変化を遂げる。
「人化ですか。」
「そうですね。妖狐などは成体になると共に人化の術を覚えるとされております。ただ…この子はまだまだ幼子ということですわね。」
シロの人化した姿は玉藻のような大人の女性然とした姿ではなく、まさしく幼女と言った感じであった。
「あるじ!」
「よしよしです。むむ、やっぱり尻尾はもふもふですね。」
「あるじ。くすぐったい。」
「狐の時より尻尾が大きくてもふりやすいです。ちょっとそのままにしてろです。」
「わかった。」
雫が暫く幼女モードのシロへのもふりを堪能したのは言うまでも無いが、途中で暇になったアンフェが乱入することでその時間が更に長引くのであった。




