相性が悪い
酒呑童子は強かった。わんこと同等のスピードに鉄ちゃんの防御力を上回る攻撃力。雫のボムも何発も受けられる耐久とどれも一級品であった。しかし残念ながら酒呑童子は雫たちを軽く見ていた。相性が悪い雫たちとの対戦ではとっとと雫を倒すべく行動するべきであった。しかし酒天童子はわんこたちを蹂躙することで圧倒的な勝利を雫に印象づけようとしてしまった。
「なぜじゃ。ワシがお前らなんぞに敗北するなどあり得ん。」
「知らんです。負けは負けです。さっさと札をよこせです。」
雫たちに勝つためには雫を狙いつつ、フォローしに来たわんこたちを各個撃破するのが得策であった。まずサポート役のアンフェとシロを倒し、そうすれば酒天童子の攻撃を鉄ちゃんは耐えきれなくなる。それから攻撃をする隙を与えずわんこを追い続ければ勝つ見込みはあったのだ。
「全員がかりの卑怯なやり方とは言え規則は規則じゃ。札はくれてやるわい。だがもう一度じゃ、もう一度勝負せい。」
「札くれるならここに用は無いですから後免蒙るです。」
「な、なんじゃと!貴様には戦士としての誇りはないのか!」
「まあ無いです。そう言うのに興味も無いです。ねっわんこ。」
「…くぅん」
わんこは何とも言えない表情で雫を見つめる。その表情を見た雫は納得した顔になり、
「ほらわんこもこう言ってることですし、早く渡せです。」
独自の解釈をした。
「まて、そこの犬っころはそんなことは、」
「お前にわんこの何がわかるですか?今日はあと二軒、回らなきゃならんですからさっさとしろです。」
雫はだんだん口が悪くなっていった。そんな態度に怒りが抑えられない酒天童子だが、こんな感じで規則には厳しい様子なため渋々ながら札を渡してくれるのだった。
「くぅん?」
次の屋敷に向かう途中、先ほど何故か機嫌が悪かった雫を心配するわんこたち。すると、
「別に大丈夫ですよ。ああ言う偉そうな人が苦手なだけです。あと大きい人もです。ああ言った奴と話してると疲れてくるです。」
平均よりも小さな雫は、背の大き過ぎる人と喋るのがそんなに好きではない。そのため見上げるどころではない酒天童子は最悪であったようだった。結局、雫と酒天童子は戦闘スタイルも、性格も体格も全てにおいて相性が悪いのであった。
「さて次はえーと何処でしたっけ?」
「コーンコン」
「ああ、玉藻さんでしたっけ?妖怪としての種族的にシロと同じ妖狐なんですよね。さっきのよりも強いってことは、私の必殺ボムが火を吹くです。」
「…わんわん!」
「コンコン!」
雫の言う必殺ボムとは『紅蓮の炎』と同等程度のボムである。しかしこれは普通のボムとは違い、その効果のおおまかな事以外、製作者の雫にすらその詳細がわからないという危険性があった。
「えー、でもこういう機会じゃないと使えないです。」
「………!」
「ぁ~ぇ~!」
雫の考えを全員で止めにかかるのであった。




