近距離戦闘者の相性
わんこと鉄ちゃんは札を三枚持って帰ってきた。これで天邪鬼から受け取った分とあわせて、4枚が揃った事となった。
「おお、流石だな。こんな短時間で妖怪七人衆の半数以上が敗れるなんてな。お前の配下の奴等もすげー逸材じゃねーか。」
「わんわん!」
「ふーんです。何かヤミからは普通に貰えたみたいです。だから実質お前からのあわせて三枚です。」
「たく、ヤミのやろう。七人衆の責任の重さを、まあいいか。それにしても海坊主は兎も角、牛鬼の旦那がやられたのか。これは序列上位の御三方もうかうかしてられないんじゃないか。」
序列五位の海坊主と序列四位の牛鬼。力自慢の海坊主は兎も角、相手に適応して冷静に戦える強さの範囲を持っている牛鬼が負けたとなれば、わんこと鉄ちゃんの強さはかなりの物だと判断できる。そして本来、妖怪七人衆との対戦は別に1対1でなければならないという規制が有るわけでも無いので、雫のパーティー全員で挑めば序列上位の三人に勝てるかもと天邪鬼も考えたのだ。それでもこの妖魔街の長には勝てるとは思えないが。
「そう言えば、その序列?の上の妖怪ってどんな奴等なんです?」
「御三方か?詳しく言うと長くなるから簡潔に言うと、近接戦闘化け物な酒呑童子の親爺、妖術のスペシャリストの玉藻の姉さん、もう何でもありの大天狗の爺だな。」
「へーそうですか。まああんまりわからんですけど、明日にでも行ってみるです。」
天邪鬼の説明ではあんまりイメージが湧かないので、明日にでも実際に会ってみることにして、今日のところはログアウトするのだった。
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翌日、雫は序列三位の酒呑童子がいる屋敷に訪れていた。瞳も来たがっていたがMP問題で妖術を殆ど使えない雫に比べて、瞳はまだまだ伸び代があるのでもう少し天邪鬼の元で妖術の修行をすることになった。
「たのもーです。誰かいないですか?」
屋敷に着いた雫は門の前で声を掛ける。すると
「おうおう、昨日に続き今日もか。珍しいのう。」
凄まじい威圧感を放ちつつ此方を見下ろす鬼の姿があった。ただ、そんな事で動じる雫ではないので要件を伝える。
「札くださいです。」
「おう?札をよこせじゃと?おのれえらく舐めた口を利きおるのお?その程度の覇気でワシに勝てる気でおるんか!」
自身を軽んじられていると感じた酒呑童子は雫たちを睨み付ける。しかし別に札を貰う以外にここに用も無い雫は何を怒っているのか理解が出来ず、ただ首をかしげるだけであった。
「何を怒ってるか知らんですけど、どっちにしてももう四枚集めちゃったです。どうせなら全部揃えたいだけです。」
「なに?お前ごときが札を四枚じゃと。戯言を言いよって。よかろう。ワシがおのれらの戯れに付きおうたろう。」
主人である雫が圧倒的に弱そうであったため、配下であるわんこたちに見向きもしなかった酒呑童子は雫たちを軽んじていた。そのためそんな雫たちに見縊られたと感じ自尊心の高い酒呑童子は怒りで我を忘れてしまったのだろう。
「じゃあよろしくです。」
「ワシに挑んだことを後悔させてやろう。」
雫たちの酒呑童子退治が始まる。それは酒呑童子が思っていたように一方的な戦いとなる。しかし違うのは蹂躙されるのが雫達ではなく自分という事である。残念ながら接近戦主体の酒呑童子に雫たちの相性は最悪と言ってもよい。
驚くべきことに酒呑童子の攻撃力は鉄ちゃん単体の防御力を上回っており、わんこの影移動に渡り合える機動力も備えている。しかしアンフェやシロのサポートありでは十分戦える範囲内であるので問題ない。さらに根本的に近距離戦闘特化は雫の兵器を防ぐ術が無いので、わんこの移動スピードと同等で追い付けはしない酒呑童子に勝ち目は無いのであった。
結局、酒呑童子の防御を上回り遠距離から大量の爆撃を受け徐々に削られて回避しようにも出来ず、成す術なく倒されるのであった。




