酒呑童子の威圧
妖魔街のアイテムショップではシロの為に『妖術』を強化する物を何点か買うだけで、雫にとっては不作に終わってしまったが、素材屋には面白い物が揃っていた。『妖力草』や『怪面草』と言ったここでしか見かけないような植物や素材が並んでいた。雫は素材の説明を求めて店員さんに話しかける。
「ここに並んでるののほとんどは妖とか怪とかついてるです。これで何が作れるですか?」
「あれ。貴方、職人さんなの。見えないわね。こういう素材は『妖術』の触媒だったり、補助に使うことが多いわね。これを使って何を作れるかは詳しくわからないけど、この『妖紙』なんかは『護符』とか『御札』なんかを作るのに使うって陰陽師さんは言っていたわね。」
「陰陽師です?」
「悪霊とか闇堕ちした妖怪なんかを退治する職業よ。妖怪七人衆の家来さんとかが兼任してることが多いらしいけど。」
「へー。そうですか。そういえば最初の頃『護符』ってやつを使った記憶があるです。」
「わんわん!」
雫は朧気にだがわんこは鮮明に覚えているようで反応する。鉄ちゃんたちは何のことかわからない様子であるが、折角なので『妖紙』など数点を購入して錬成に挑戦してみることにする。買い物が一段落ついたので次はシロ案内のもと『妖術』の習練所に行くことにするのだった。
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その頃、ヤミに教えられた他の妖怪七人衆の屋敷の内で、序列三位である『酒呑童子』のもとに訪れた瞳はというと、
「えっと。ありがとうございます。」
「よいよい。ヤミがよこした客じゃ。茶でも飲んでゆっくりしてきゃええ。」
酒呑童子が淹れたお茶を飲んでいた。最初は威圧感丸出しで瞳を警戒していたが、ヤミの名前を出した所、掌を返したように態度を変え、歓迎してくれるのだった。
「ワシらは妖怪七人衆なんぞ呼ばれて長が序列なんぞつけとるが、そうでなくてもワシはヤミのことは認めとる。ありゃもう少し修行すりゃ玉藻のババアよりも上玉になる。」
「そ、そうですか。」
「そういや、幾分か前にヤミが玉藻のババアと同型のを引き連れてたのお。アレも上玉じゃ。妖怪の未来は明るいの。ガハハ。」
瞳は陽気に話を続ける酒呑童子にここに来た目的を話す。それは妖怪七人衆の居場所をヤミに聞いた時に、一緒に聞いた試練についてであった。
「あ?試練?ああ。ここ暫くそんなもんを受ける輩はいなかったからの。忘れてたわ。じゃが、やめておいた方がいいの。お前さんじゃワシに触れることなく死ぬぞ。」
試練の話をした瞬間、酒呑童子の纏っている空気が豹変しまたしても瞳は圧倒されてしまう。
「ここの試練を突破したいなら、ワシら妖怪のことを学んでからでも遅くないじゃろ。確か妖術や仙術を教えておる場所があった筈じゃ。そこに行ってみることじゃ。」
圧倒されてしまい、挑む空気でもなくなってしまった瞳は、酒呑童子の言うとおりの場所に向かってみることにした。奇しくも雫たちと瞳の再会は近そうである。




