妖魔街
『妖魔の脇道』のボスフィールドに復活した猫又のヤミがにゃーにゃー言っているのを尻目に、その先の『妖魔街』に入った雫たちは、普通の街と全く違うNPCに興味津々であった。
「亜人の街はみんな獣人でしたですけど、ここはそもそも人がいないです。」
「そうですね。街の中なのにさっきまいた『妖魔の脇道』と変わってませんね。」
「わんわん!」
「わんこが言うにはさっきのモンスターたちよりも、こっちの奴らの方が強いらしいです。」
「そうなんですか。」
『妖魔街』はその名の通り妖魔が住んでいる街である。そのためなんとなく見たことのある妖怪や化物などが街中を闊歩していた。第8の街も雰囲気があったがこの街もかなりのものである。
「うーん。ここなら私がまだ見たこと無いような素材とか、アイテムとかがあるかもしれないです。私はそっちに行ってみたいです。」
「我は先ほどあの猫又から『妖怪七人衆』の居所を教えてもらったので、そやつらに会ってみたいです。」
「そうですか。ならここで別れるです。またなです。」
「はい。」
雫は『妖怪七人衆』などどうでもよいため、そんなことよりも未知の素材やアイテム収集をするため瞳とはここで別れることにするのだった。
瞳と別れた雫は、ここに一度来たことがあると言うシロの案内のもと、『妖魔街』を見て回ることにした。『妖魔街』には『妖刀』や『妖珠』と言った装備やアイテムが出回っていた。これらのアイテムは『妖術』の補助をする物であり、ここに住む妖怪たちは殆どの物が『妖術』を使用できるため、こういう物が売られているようであった。しかし『妖術』を習得していない雫にとっては無用な物であり、ガックリしていた。すると
「コーンコン」
「えっここに『妖術』を習えるんですか?本当ですか。」
「コン」
「いや別にそんな気はさらさらねーです、けど興味はあるです。」
雫は『妖魔街』の特産の素材を見て回ったあとに『妖術』を習える場所に行ってみることにするのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この『妖魔街』ではここを守護する妖怪七人衆とここを治めている長の八人が各方位に屋敷を構えている。放浪癖があり、七日に一回の守護の日以外あまり街にいることの少ないヤミなどは、こぢんまりとした家を拠点にしているが。
瞳が妖怪七人衆の話を聞いた所、ヤミはこう語っていた。
「妖怪七人衆を妖怪の格で序列をつけると、私は六番目にゃ。相性もあるから序列はあんまり意味がないにゃ。そこまで大した差は無い。でも長と序列三番の四人は別格にゃ。七人衆に会いに行くのはいいけど、アイツらとは争わない方がいいにゃ。」
瞳から見てもヤミの実力は相当に高かった。雫の『紅蓮の炎』によって台無し感は出てしまったが、全体的に高いレベルでまとまった強者である。そんなヤミが別格と称する上四人、瞳は俄然興味が湧いた。
瞳がやって来た屋敷は東に居を構える序列三位の妖怪の元であった。妖怪の名は酒呑童子。大鬼らしく屋敷はかなり大きい。瞳が中に入ろうと屋敷の門を潜ろうとすると上方から腹に響くような声が聞こえてくるのだった。
「なんじゃおのれは。何ようだ?」




