クランのメンバー
雫が盟主を務めるクラン『神の雫』の構成メンバーは現在二名であった。勿論、雫の勘定ではわんこ、鉄ちゃん、アンフェ、シロは加えているが正式にクランのメンバーとして表示されるのはプレイヤーのみである。ゲーム開始から殆ど他のプレイヤーとの交流をしてこなかった雫としては、別にクランに人を入れる理由が思い付かなかった。しかし瞳が物申す。
「クラン対抗戦などの運営主催のイベントだけでなく、プレイヤーが主催となって大会も行われるなか招待される上で重要なファクターの中に、クランのメンバー数は含まれている。有象無象を多く入れる必要などないが、二人はただの零細クランだ。少数精鋭はカッコいいが零細は…」
「零細でも別に構わんです。てか実際がどうであれわんこたちもクランのメンバーですから六名も…」
「せめて、せめてプレイヤーだけでそれくらい。四天王とか名乗れるくらい募集しましょうよ。カッコいいじゃないですか。」
「面倒ですね。わかった、わかったです。じゃあ良さそうなの見つけたら勧誘すればいいです。」
瞳の説得によりメンバー収集を善処する運びとなった。しかし雫は積極的にコミュニケーションをとるタイプではないし、瞳は圧倒的な人見知りで他人に話し掛けることを苦手としてるため、雫と瞳の出会いみたいな感じで仲良くなるくらいしか方法が無さそうである。そんなこんなで今後の方針も決まったようで殆ど無計画の行き当たりばったり感が否めないが、雫のクランらしいとも言える。
クランのことも一段落ついたところで次は何をしようかと考えると雫はこの前のイベントの会話で気になっていることがあるのを思い出した。
「そう言えばこの前、種族の進化について話したですけど、それに興味があるです。」
「本当ですか主。それならそれいきましょうか。人族は結構、種族選べるがどうします?」
「それは悩みどころですけどまあ単純にDEXが一番上がりやすいのってどれです?」
「え!まだ上げる気なんですか。主ってDEXにほとんど極振りしてますよね。」
「そうです。」
「これ以上、必要ですか?」
確かに雫のDEXは異常だ。元々、錬金術師というジョブ自体DEXに補正がかかり、またDEX上昇系のスキルなども覚える。さらに雫の装備も戦闘用ではなく、生産者向けの装備であるためレベルなども加味して上位の生産者プレイヤーでも比較にならないほどのDEXを誇っている。
一応、これまでの戦闘で、自分の起こした爆発の余波でHPが半分削られるという珍事が起きたことがあり多少、耐久面にも最小限ステータスを振り分けようともしたが、それも鉄ちゃんが『霊亀の首飾り』を手に入れて以降全くである。
その上さらにDEXを求めるとは、雫が何処を目指しているのか全くわからない瞳であった。
「もっと前ならまだしも、今さら私の攻撃力が上がっても意味ねーです。それならまだ一点特化の方がましです。」
「そうですか。DEXが高い種族なら『オートマタ』とか『ホムンクルス』とかですか。どっちもクエストは第3の街で受けられますよ。そう言えば種族進化のクエストだと隠し要素があるみたいでほとんどクリア出来ない見たいですけど。実際我もクリア不可であったし。でもクリアすると特別な種族になれるらしい。主ならクリアできるかもしれませんね。」
「へー面白そうです。頑張ってみるです。ねっわんこ!」
「わんわん!」
雫はそう意気込むのだった。しかし種族の進化クエストは失敗すると同じ進化クエストは受注不可になるし、隠し要素を発見できずに成功しても通常のまま進化してしまい戻れず、一発勝負のため難易度はかなり高い。雫たちであったも成功できる可能性は低いかもしれない。
そんなこんなで雫たちは次は第3の街に向かうことにした。




