ソロを極めし者たち
雫はアイと名乗る女性を眺める。雫の知り合いにアイという名前は何人か存在するが自分から『邪悪な瞳』とかいう奇抜な言葉を口にするのは一人しかいない。しかし雫が知っているアイの姿と実際の彼女の姿ではまるっきり別人であった。
ゲームであるため別人になりたいとするものはいる。性別の変更は出来ないが顔を実際よりもかっこよく、可愛くするなどだ。むしろ全く現実と変えていない雫のようなプレイヤーの方が少数派である。しかしアイのゲームでの姿は平均身長を容易に下回る雫よりも少し高いくらい。話し方と相まって年下だと思っていたのに、現実の彼女は170後半、下手したら180㎝を越えるくらいの長身であった。ただ顔をよく見れば多少凛々しい顔つきだがゲームキャラの顔な面影が感じられた。
「お前が私の知ってるアイってことは理解したです。じゃあ何個か質問するですけど、まず本名は?アイで良いんですか?」
「ほ、本名。我が名は、ダークネ、」
「本名を言えです。」
「…はい。瞳です。黒井瞳です。」
迫力に負けて素が出てくるアイ、改め瞳。その後の色々と質問を重ねると瞳は雫の一つ年上の高校二年生であること、家もここから近く同じ高校ではないが近くの高校に通っていることがわかった。
「じゃあ最後ですけど何でゲームと今とでそんなに身長が違うです?面倒じゃないですか。」
年上だと判明しても態度を変えない雫は最後の質問をする。
「まあゲームを始めたばかりの頃はそこそこ苦労しましたけど、慣れましたし。身長を変えたのは、…何となくです。」
何か言いにくそうな様子で答える瞳。その様子に何かを察してもいいのだが、雫はここで鈍感力を発揮していく。
「わからんですね。私は初期設定とかよくわからなかったですからそこらへんかなり適当ですけど。でも瞳は現実の方がカッコいい感じで良いですね。」
「カッコいい…。あ、ありがとうございます主。」
なぜかいきなりテンションが上がった瞳を不思議に思いながら雫は、
「まあゲームでならそれでも良いですけど現実では雫と呼んでくれです。」
こうして自己紹介も済んだので雫たちは買い物に戻るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
現実での再会の次の日、そういえばイベントでバタバタしていてフレンド登録をしていなかったことを思い出した瞳とそう言われてフレンド登録とは何であったかと首を傾げた雫は第4の街、雫が拠点にしている孤児院で合流を果たした。ちなみに拠点その2は亜人の街のリクの家である。錬金術でわからないことがあると度々訪れて一緒に研究している。
言われるがままに合流してフレンド登録をした雫であったが、そもそも他のプレイヤーと一緒に遊ぶという経験がほぼ無い雫はでは何をするのかわからなかった。
「で、何すんですか?やること無いなら今日はイベントで手に入れた色々使って錬成してたいです。」
「それだとソロプレイじゃないか。だが我もあまりパーティープレイのことは知らんないし、あっ、それならばクエストでも受けます?
我がレベルだと手が足りないクエストがあるし、それとも最高難度のクエストでも、って主の錬金術師って戦闘職でしたっけ?」
「一応、戦闘職ですけど、ギルド?でしたっけそこにはいったことねーです。」
「え、いや主ならあり得る。じゃあギルドカードなんて持ってませんよね。」
「持ってるわけ…む、むむ、なんかそれ聞いたことある気がするです。何でしたっけ?」
「わんわん!」
「…ああ、あれですか。えーとはいこれです。」
「え、何故に持ってる。どれどれ…ってランク高っ!私より上じゃ、盟主?」
瞳は情報量過多であたふたした。何故かギルドに行ったこと無い人がギルドカードを持っていて自分よりランクが上でクランの盟主であったからだ。ただし、意味がわからないだろう。しかし少しではあるか雫と行動を共にして雫耐性を獲得している瞳は即座に冷静に戻る。
「主がなぜ何も知らないかは知らんがまだノーネームだし、それなら折角ですし、クランを正式に設立しましょうよ。それに私も入れてください。」
200話。長かったなー。
次回、遂に雫がギルドにいくかも?




