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戦う錬金術師です(涙目)  作者: 和ふー
第1章 王国編
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黒棺

濁流に飲まれることによって生じる問題は、呼吸とダメージである。呼吸については種族によって限界値が設定せれている。雫のような人族は水中などの呼吸不可のエリアでは長く活動できないが、不死者である混血吸血鬼や妖精のアンフェ、龍種たる鉄ちゃんは呼吸がほとんど不要なため、呼吸不可な場所でも活動できる。ただ、鉄ちゃんの場合水中では重すぎて泳げないため問題がないわけではないが。それに比べてわんこやシロは呼吸が出来ないと活動に支障が出るが人族ほどではないため雫以外は呼吸の心配は不要であった。

二つ目は濁流によるダメージ判定と流されている最中に障害物に激突した場合のダメージであった。これはわんこと鉄ちゃん以外の全員が耐えきれるか不安がある。そのためわんこたちは濁流が襲い掛かった瞬間、即座に行動に移す。

まず鉄ちゃんは問題ない。多少の泥水では鉄ちゃんは動かせないし、動かされて地面に何度打ち付けられようともそれで鉄ちゃんがダメージを受けることはない。アンフェとアイも大丈夫だろう。二人は空を飛べる。アイは雫の行動に面食らっていたが、アンフェが気を利かせて自身にも掛けている守りの魔法でフォローしたため、何とか濁流から逃れることに成功している。シロも妖術による『変化』で上空で難を逃れていた。彼らも長い間、雫と行動を共にしているだけあり、雫に対して驚かずに動けるようになってきていた。

そのため唯一、問題なのは水中で息が続かずそれ以前に濁流の衝撃でHP全損しかねない雫だけであった。それを予見していない筈がないわんこは、防御系最強『黒棺』を発動した。漆黒の棺に入れられる雫。本来ならばわんこの影の中に入れたいのだが二つの理由からそれを止め、魔法を使用する。わんこ自身は影の中で濁流が流れ行くのを待つのだった。


ーーーーーーーーー


『黒棺』は魔法やスキルの中で対象を守るという一点のみに限れば最高の技だ。効果は2つ、『破壊不可』と『移動不可』である。ただし、術者の影の中にあれば術者と共に移動できる。これらの効果があるからこそ、わんこは使用したのだ。

勿論、欠点は存在する。黒棺の発動、維持、解除に膨大なMPが必要である点。そして移動するには影の中に入れておかなくてはいけない点である。わんこが濁流対策にこの魔法を使った理由でもあるが、誰かを影の中に入れるのは本来、かなりのリスクを伴う。わんこが扱える影の総量は決まっており、影の中に誰かを入れているとその分、攻守に影を使えない。さらに自身が自分の影の中に入ることも出来なくなる。そのため『黒棺』は使うタイミングが限られているのだった。

そしてわんこがこの魔法を選択したもう1つの理由は、


「おーい、わんこ。何も聞こえないですけど、もうそろそろ濁流も去った頃のはずです。これを解除してくれです。おーいです。」


濁流が収まったタイミングで雫はわんこに呼び掛けた。しかし応答がなかった。雫の言った通り、この棺からは外の声が聞こえない。そして中からの声も外には聞こえないのだ。


「わんわん!」


わんこは棺の外で他の皆に呼び掛ける。すると


「………………」

「コーンコン!」

「ぁ~ぃ~」


全員が頷く。それを見ていたアイはボソッと呟く。


「ふむ。主みたいには理解できんが、反省のため隔離といったとこかの?

まあ主の自業自得かな。」


『黒棺』を使った理由はもう無茶が出来ないように雫を封じ込めるためであった。雫に出せと言われれば従ってしまうわんこも、指示が聞こえなければ実行できる。イベント終了は迫っている。わんこの残りのMPならばアンフェの回復を挟めばギリギリ最後まで維持できるだろう。

わんこは黒い棺を影の中に仕舞い込むのだった。


「わんこ。もしかして怒ってるですか?

謝るですから。おーい。」


雫の叫びは棺の中で悲しく木霊するだけであった。


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