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戦う錬金術師です(涙目)  作者: 和ふー
第1章 王国編
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不用意な一撃

雫の発言を聞いてアイ以外は何をするか察した。と言うか鉄ちゃんの鉄龍砲でも大したダメージを食らわせられないだろうし、そもそも一つ一つがある程度の大きさの沼の中でも最大に近い規模の沼に、濁った水のせいでボスの影も見えない所に何を放ってもダメージどころか掠りもしないだろう。

そうなれば鉄龍砲の威力を越え、敵が見えなくても当たるだけの範囲の攻撃をする必要がある。となれば簡単な話である。しかしわんこは嫌な予感しかしていなかった。雫が爆発によって敵を倒そうと考えたなら仲間が側にいない限り、即座にボムを投擲するだろう。わざわざいい考え云々など言わない。ならばボムを投げて相手を爆破という単純なモノではない筈である。


「くぅん?」

「なんですかわんこ。私の作戦に興味津々じゃないですか。なら袋を出してくれです。」

「…わん。」


作戦の概要すら教えてはくれないが、わんこは魔法で黒い袋を生み出す。雫の作戦は大抵の場合、目的を果たす。少し前にも雪原で大惨事を引き起こていたが、それでもボス撃破という目的は達成している。そのためわんこたちも注意や不満を少々漏らすくらいで許してしまう。過程や結果の後に問題は多いがそれでも結果自体は優れている。そのためわんこたちが雫の作戦を却下しないことを良いことに時折、雫は自己完結し作戦の説明を省くこともある。


「わんわん!」

「まあ見てろです。問題の邪魔者を消してやるです。」

「まったくわからんな。まあ我は主の策略を見物するとしよう。」


雫を深く知らないアイは放置であったが、他の面々は何となく雫の作戦を理解する。ボムでの攻撃対象はボスではなく沼そのものであるということに。邪魔な水を無くしてボスを引っ張り出す作戦なのだと。しかしそれでも不安な点があった。それはさっきも言ったがアレであった。


「わんわん!」

「うん?

ああ、わかってるです。別に沼の水を蒸発さ

せる気はないです。だから心配しないでも『紅蓮の炎』は使わんです。どっちかって言うと吹き飛ばすです。」


と自信満々に宣言した雫は影の袋にボムを入れていく。今回の爆発は沼の底付近で起こすつもりなのだろう。安全面を考えれば妥当な判断だろう。しかしボムはある程度の衝撃によって爆発してしまう。雫がただ沼に投げ入れたら、水面に触れると同時に爆発するだろう。今回はボスを狙うというよりも沼に向かって爆発するのだからその可能性は高い。そのため爆発せずに運ぶための手段として魔法の袋なのだろう。

しかしわんこたちの表情が強ばる。確かに沼はかなりの大きさだし、深さも分からないため1つじゃ足りないと思う気持ちは分かる。でも下手したら『紅蓮の炎』に匹敵するような代物を何個も注ぎ込むのは過剰だと言わざるをえない。しかしそんなわんこたちの憂えなど気付かない雫は袋を沼に入れてしまうのだった。


「って、そんな目で見るなです。もうすぐこのイベントも終わりですし在庫処分ってやつです。」


やっとわんこたちに気づいた雫は見当違いなことを言っていた。しかしもうボムは投下してしまった。ならばわんこたちがやることは阿呆な主人を守ることだけだ。少し沼から離れて待つ。

そして時は来た。いつものような単純な爆発音は聞こえない。その代わり大地を揺るがすような衝撃を受ける。しかし更なる衝撃がわんこたちを襲う。誰もが絶句してしまう光景だった。

沼が浮いたのだ。意味がわからない光景であった。そして一番驚愕したのは何も知らされていなかったアイだった。一瞬で素に戻される。


「えっ、浮い、え?」


そんな誰しもが目を疑う状況の中で、しかしそれは終わりではなかった。その事にわんこが気づく。雫が新たなボムを持っていることに。そして浮いている沼と一緒に打ち上げられている物体があった。それはかなり大きな蛙であった。確かにこの作戦はボスを沼から引き上げることで、それに成功したら次はボスに攻撃すべきだろう。


「わんわん!」

「いくです。てやっ。」


わんこの嘆願は虚しく、雫はボムを蛙に投げつけた。只でさえ、沼の底から上空に打ち上げられる衝撃を食らった蛙は、追撃を受ける以前に瀕死の重傷だ。最早、落下ダメージで倒れる可能性すらあるエリアボスにその追撃は必要なのか分からないが、その爆発は空中に浮かぶ沼の下で起こった。その爆発により沼の泥水は拡散した。浮かぶ沼の水量は尋常ではない。それが元の場所にではなく、陸地にも降り注いだ。


「あっ、ヤバいです。」

「わ、わん!」

「あ、主のばかぁ」


それはその水の一部が濁流となり雫たちのいる場所にも襲い掛かったことを意味する。生物にはどうすることも出来ない水量に雫たちは呑まれてしまうのだった。



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