沼地でお喋り
ミリーはそこら辺に寝っ転がっていたので、バラバラになったすいと一緒に召喚解除してもらい、沼地エリアを探索することにした。雫は気を付けていても沼にハマるだろうことが予想できるため、ずっとわんこの背中に乗っていた。
そんな雫たちを見たアイが呟く。
「こうして見るとやっぱり主とわんこ殿は仲が良いっていうか相性が良いですよね。と言うかそんな事言ったら主たちはしっかりと役割分担できてますね。主が司令塔でわんこ殿がアタッカー、鉄ちゃん殿がタンクでアンフェ殿がヒーラー、シロ殿がサポート全般。まあ我は独りで全てをこなすオールラウンダーですけどぉ…」
パーティーは組みたいけど人見知りで厨二病なアイには少し難易度高め。雫は他人の事とかあまり気にせずどんどん喋り、いきなり黙る。アイが変でも気にしなかったので良かったが、自分からは誘えないし、誘われたら吃るため結果的には雫のマイペースはプラスに働いたと言える。
「そうですね。一人である程度できる方が便利かもです。でもめんどそうです。私なら途中で飽きる自信があるです。」
「そんな事に自信を持っても。まあ確かにやること多いですね。HP、MPやバフ、デバフの管理とか。我がジョブの『魔眼師』ってデバフ関係は豊富で相手との相性で選んだりとか色々。」
「バフ?デバフ?
何ですそれ。強いんですか?」
「えっ!?
えーと知りませんか。バフは対象者のステータスとかのパラメーターを上げるモノでデバフは反対に下げるモノですね。というか錬金術師って支援職の筈ですからそういうのスキルとか魔法とか覚えません?」
「そーいえば、そういうスキル何個か覚えてたです。『生体硬化』とか『賢者の手ほどき』。使ったことねぇですけど。魔法とかも覚えてはいるっぽいですけど根本的にMPが足らんから発動出来んですし。」
「えっ!『賢者の手ほどき』ですか。それって現時点のDEX上昇率トップのスキルじゃないですかぁ。正規のスキル屋さんじゃ売ってなくて闇市とかで凄い値段で売ってるの見たことありますよ。そんなの持ってるって主のレベルって凄く高くないですか?」
何かアイの食い付きが思ったりより良かったことに軽く驚く雫。自分を対象に選べない『賢者の手ほどき』は雫としては価値が無い。それなら上昇率は低いが雫のDEXを上げてくれるパッシブスキルの方が嬉しいのだ。
と言うか雫はゲームプレイヤーである癖にレベルなどへの関心が殆ど無く、アイに訪ねられても思い出せず自身のステータス欄を確認するのだった。
「かなり昔に見たっきりでしたね。えーと86ですね。あれ?わんこたちのレベルが90越えてるです。地味にショックです。」
「は、きゅう。ソロの我より高いなんてぇ。というか90越えってトップ層のレベル帯じゃ…」
久々に確認したらシロにすらレベルが負けていたことに衝撃を受ける雫だが、相手に与えたダメージ量やラストアタックなどに応じて貰える経験値が決まるこのゲームでは当然の結果である。
アイとしては見た感じ殆ど戦闘に参加してなさそうな雫が自分よりも大分レベルが上なことに衝撃を受けて口をパクパクさせている。
そんな呆然としているのアイを尻目に雫は別の事を考え出す。
「それにしても最初は止まってても遭遇してたの
にさっきから全然プレイヤーに会わないです。
残り時間ってあとどのくらいです?」
プレイヤーとの遭遇率が下がっているような気がした雫は、アイにイベントの残り時間を聞く。するとアイ再起動してマントのポケットからおもむろに懐中時計を取り出し時間を確認する。
「え、ちょっと待ってください。むむ、今14時半だから…あと一時間半くらいですね。確かにプレイヤーを見かけなくなりま
したね。でも草原とかには結構いたし。
ここだけ何かあるんじゃないですかぁ?」
「いや、そんなことよりその時計何ですか?
てか時間なら確かメニューで見れると思うです
けど?」
そう雫が尋ねるとアイは完全に息を吹き返し、興奮ぎみに熱弁する。
「ヴァンパイアにはマントと懐中時計なんですぅ。これは鉄則ですよ!」
「へーです。」
そこからアイのヴァンパイア衣装語りが始まる。話に夢中の雫とアイは近くの沼の中からこっそりと様子を窺う視線には気が付かないのだった。
レベルとかステータスは詳細に設定するとどうしても違和感が…まあこれは私の参考程度ですね。
タイトル通り錬金術師は戦闘職なんだぞーアピールを偶にしないと忘れそう




