魔眼の少女
鮮紅の荊とは雫が付けている魔法効果が付与されている指輪のようなブレスレットに付与されているスキルの名前であった。効果はそれほどでもなく、発動時に効果圏内にいる敵の拘束とHPドレイン、吸いとったHP量に応じて受けれるダメージ量が増大するという効果である。
一見すると強そうなのだが初期の荊は召喚主のステータスに応じた能力なので、アックスが倒れたのは焼傷やわんこの攻撃のダメージで殆どHPが残って無かったからである。相手を不意打ちで拘束するくらいの意味しかないのだ。
元々『鮮紅の荊』は雫が新しく覚えた錬金術師関連のスキル『複製』を試しに使った時に偶々出来たスキルの残骸であった。スキルの熟練度が足りず、素材や低ランクのアイテムの複製しか出来なかったので、つまらなくなった雫が自身の持つスキルに『複製』を使ったらかなり劣化版であったが複製出来ることがわかり、色々と使っているときに出来たスキルなのである。
「やっぱりダメですね。もう少し色々と使ってみるしかねぇですけど『荊森』の方が何倍もつよいです。」
「ぉ~ぅ~」
雫はそう呟くがその認識で正しい。『荊森』によって現れる荊は、発動するプレイヤーに左右されないため、低ステータスの雫にはかなりありがたい。しかも『荊森』の荊は発動場所からの移動が可能であるが、鮮紅の荊は発動場所から動かせない。雫のように移動せずに戦うタイプの者ならばまだ良いが、わんこなどのステータスが高く、初期の荊が強化される者では扱いずらいという面倒なスキルなのであった。
「じゃあ、エリアボスと小枝たちも倒したですし、次に進むです。というかかなりアイテムの減りが早いですからボムの素材が手に入るエリアならいいんですけど。」
「わんわん」
雫はトップクランの選抜された3チームを退けても、何の感慨もなく直ぐにその場をあとにすることにした。雫にとっては相手が強かろうが弱かろうが大した違いはないのだろう。
ーーーーーー
所変わって雫たちと離れて行動していた小鉄たちの一対、ヒーとクーは強敵に出会い完膚なきまでに叩きのめされていた。彼女のプレイヤーネームは「邪悪な瞳」と書いて〈ダークネス・アイ〉と読む。何回目かのアップデートで追加されたレア種族の1つ「混血吸血鬼」ハーフヴァンパイアであり、2ndジョブは『魔眼師』となかなかの女の子なのだ。片目を眼帯で隠し、ゴスロリ風なヒラヒラなドレスを身に纏っていた。
彼女のジョブの『魔眼師』は使用できる魔法が他の魔法系ジョブよりも少なく、魔法攻撃力も低下するが特殊な効果を持つ眼を用いて戦うジョブであった。
彼女はこのイベントに1人で参加しており
「くっくく、我は孤高なる存在。そんな我は群れたりなどせぬのだ。」
などと言ってはいるが、クランを設立したが誰も勧誘できず、今回のイベントにも誰にも誘われず、誘う勇気も持てずソロ参加を決めたのであった。そんな彼女だがPSはかなり高く、元々の種族の基本ステータスが高いこともあり、魔法戦士のような立ち回りが出来る優れたプレイヤーなのであった。
魔眼によって動きを封じ込められた後、魔法と剣のコンビネーションにやられてしまったのだ。そんな邪悪な瞳は。
「ど、ドラゴンか。ドラゴンを使役しているプレイヤーかぁ。カッコいいな。」
龍を使役するという厨二心くすぐられるワードに素が垣間見れている。
「他にもいないかなぁー。ごほん。フッフフ、我がドラゴンごとき屠ってやろうぞ。」
彼女はカッコいいを求め小鉄たちを探すのであった。




