閑話 放火魔と呪輪
多分、雫から説明無いと思うので一応。
エリアボス討伐の報告を受けたプレイヤーが徐々に森エリアに集まり始めた。このエリアに来るパーティーの殆どが人数が少なく、察するに彼らは別のパーティーに殺られ、エリアボスという6人パーティーだと討伐するのが難しい強敵から逃れるためこのエリアに来たのだ。
「くそ、俺らも他の奴等と手を組むべきだったぜ。あいつらざっと数えただけで60はいたぜ。」
「バトルロイヤルってことを完全に忘れてやがる。てかあれじゃ勝ち残っても最後に仲間割れするだけじゃねぇか。」
草原エリアの見晴らしがよい場所で軍隊のように隊列を組み陣取っている集団に仲間四人をやられ、何とか逃げ延びた二人は悪態を着きながら何とかアナウンスを聞いて森エリア迄来たのだった。そして少し進むと驚くべき光景が辺りに広がっていた。それは燃え盛る森林、森エリアは火の海と化していた。
「おい、ここって森エリアだよな火炎エリアかなんかじゃねぇか?」
「てかそれどころじゃない。何か近づいてくるぞ。早く逃げるぞ。」
彼らは異常事態を即時に発見し即時撤退が出来たため逃げおおせるのだった。
火の海の中では人間サイズにまで成長した異様な物体がのしのしと移動しているのだった。
プレイヤーの軍隊から逃げ延び火の海から逃げ延びることに成功した彼らは運が良かった。
「何だったんだありゃ。確かに森とか草原エリアで火魔法を使えば燃え移ることもあるが、彼処まで広がらんだろう。あれはエリアギミックとかと同じくらいの規模だった。」
「だよな。まあ何にしても逃げれて良かった。」
二人が安堵した瞬間、お互いの頭にぽんっと軽く触れるような感触があった。痛みすら感じられないような些細なものだ。自身の手首に見慣れない腕輪が嵌められていなければ、彼らは気にも止めなかっただろう。
「うわっ、何だこれ。」
「ブレスレット?どうなってんだ?」
二人は腕輪を不気味がったが、特に何も起きなかった。見た目は完全に呪いの装備品であるため、彼らは警戒していたのだ。二人は運だけでなく勘も鋭い。
「何だ何も起こらないのか。」
「良かった。いやしかし慎重に進もうここは得体が知れない。」
彼らは勘に従い、森を慎重に進んだ。少し森を進んだ頃、とある異変に気が付く。それは良い方面であった。腕輪が出現してからと言うもの、普段より速く移動できているのだ。
そして、彼らは目の前に現れた敵プレーヤーを楽々と倒せた時、腕輪はかなり良い装備品だと考えた。それと同時に、彼らは途端に不安に陥った。一つは敵のパーティーの体に幾つかの茸が生えており、それが自分たちにも生えてしまったからだ。一つは自分が攻撃した相手にも自分と同じような腕輪が忽然と現れたのだ。一撃も相手の攻撃を受けていないはずの自分のHPが4分の1以下になっていたのだ。
「どうなってんだこのエリアは、おかしすぎるだろ。」
「もう出よう。早くこのエリアから逃げよう。」
そう言って逃げ出した二人は直ぐに森エリアから姿を消したのだった。
彼らは運が良い、軍隊から逃げ延び火の海からも逃げ延び、最後には恐怖からも逃げ延びたのだ。彼らが目覚めた時には勝手に装備された腕輪も体に生えた茸も無くなっているだろう。
彼らは勘も割と鋭い。しかし、注意力は足りない。何故なら、腕輪は既に装備されているのだ。彼らが自身の装備欄を見たら直ぐ様、呪いの効果に気付いただろう。自身を殺す呪いの効果と共に。
再三言うが彼らは運がとても良い。この稀代の錬金術師が放った作品を3つも目にしたのだから。
『放浪の放火魔』 煙管の煙が広がった範囲のエリアを『火炎エリア』にし、このエリア内にいる者は火傷ダメージを負う。
装着者:炎喰茸 炎を養分にして成長、増殖する。
『呪わば輪二つ』 『呪鎖』と『強さの代償』の呪いを持つ輪と『無欲』を持つ輪の2つセットの装備。
『呪鎖』 攻撃を食らわせた相手に強制的に同じものを装備させる。
『強さの代償』 全てのステータスを2倍にする。代わりに敵に負わせたダメージの2倍のダメージを負う。
『無欲』 自分を対象とした強化、回復の効果を持つ如何なるモノの無効化。
装備者: 擬態茸




