改造されし装備
学生にとって、クリスマスにお正月と楽しみが詰まった冬休みを控えての最後の関門となる期末テストの最中である今日この頃、勉強が不得手な小枝は束の間の休み時間を机に突っ伏して過ごしていた。
「何やってんですか小枝、そんなに疲れることですか?」
「逆に何でしずちゃんはそんなに平然としてるのさ。私は連日連夜、勉強でくたくたなのにさ。」
「私もほぼ毎日イベントの対策をやってて、疲れてるです。おんなじです。」
「おんなじですじゃないよ。何ゲームしてるのさ。テスト勉強しなよ。ねえ鈴。おかしいよね。」
「……」
「え、無視?」
「……」
「何か本読んでるし、自由かよ。ああ、勉強したくない。ゲームしたい。でもテストさえ乗り切れば日曜はイベントだし頑張ろう。」
「元気ですね。頑張れです。」
「え、あ、もういいや。そうだね。」
颯爽と自分の席に戻っていく雫と会話に加わろうとしない鈴を見ながら遠い目をしながら、諦めた小枝だった。
テスト期間中は、テストが終わり次第帰宅のため、普段よりも早めに家に帰れる。本来ならばその長い放課後を活用しテスト対策をするのだが、基本的に毎日、勉強を欠かさない雫は特別テストだから多く勉強をするということもなく、いつもよりも長い放課後をゲームの時間に使っていた。
「やっぱり回復アイテムは少しでいいですね。ダメージ喰らってもアンフェがいますし、出来れば半分くらいはボムにしたいですけど、新作も使いたいですし、むむむです。」
「わんわん」
「わんこの言うとおり、お前たちに攻撃を任せるなら、ボムとか要らんです。でもそんな訳にもいかんです。」
雫にはあまり戦闘に参加してほしくないわんこたちは、雫が攻撃アイテムを持つのはあまり気が進まない。勿論自衛に最低限必要なアイテムは持っていって欲しいのだが。それに対して雫も積極的に戦いたいとは思ってないが、足手まといになりたくないと思っているのだ。
そこら辺の丁度良い塩梅が難しく、アイテム選考に時間が掛かっているのだ。
そんなこんなで捗らないアイテム選考とは打って変わって、装備品の改良は上手くいっていた。今回のイベントではアイテムの数量制限に装備品は入らないため、装備品の強化は重要であるのだ。
雫の装備は強化済みの『叡智の到達者』と魔法銃、『血操作』を使った投擲用の短剣そして獣人の錬金術師であるリクから貰った障壁魔法が封印された指輪などのマジックアイテムである。
ただ現状、魔法銃とマジックアイテムは多少の威力や制御の向上は可能であったが、雫が魔法関連の知識に疎く、イメージも出来ていないため、そこまで強化は出来なかった。
しかし短剣と障壁魔法の指輪は大幅な強化に成功した。短剣の方は龍を大量に狩ったときに手に入れた、龍の血と鉄ちゃんや小鉄たちの鱗を錬成の素材に利用した。勿論、鉄ちゃんたちの鱗は生え代わったものを利用した。
そして指輪の方は、アンフェがそれに近い魔法を使えるので相談しながら改良した。その結果雫の周りを正十二面対で囲った障壁が現れるように進化し最早原型を留めていない気もするが、雫はこのカッコいい障壁をえらく気に入った様子だった。
そしてわんこや鉄ちゃんの装備も今まで手に入れたレアな素材をふんだんに利用し、今までのどの錬成よりも気合いを入れて臨んでいるがわかる。
そして生まれ変わった装備がこれである。
焔龍の闇騎士 火属性闇属性吸収、このシリーズを揃って装備することで『黒焔化』を獲得 攻撃時に確率で対象を『焼傷』状態とする。
龍爆の籠手 攻撃に爆属性と龍属性を付与。攻撃対象の耐久値の大幅減少。
であった。『焼傷』とは『火傷』の上位の状態異常でこれになるとHPの減少だけでなく、部位欠損も生じ状態異常を治しても戦えなくする、一部のフィールドボスクラスのモンスターが使う状態異常であった。と言っても装備品の剣や鎧で攻撃しなくては起こらないので、わんこが主武器を使わなくてもいいほどの弱い相手じゃないと起こらないだろう。
ともあれ、雫たちはイベントに向けてまた1つ強くなったのだった。
やっと次回からイベントに入れます。




