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戦う錬金術師です(涙目)  作者: 和ふー
第1章 王国編
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海中の城と姫

亀は付いて来いと言い出したにも関わらずさっさと海の中に潜っていってしまった。その様子に戸惑う雫であったが、わんこやシロといった感覚が鋭い面々が警戒していないため雫も海の中に入っていく。

すると海の中に入っていってる筈なのにそんな感覚がまるでしない。雫はこの感じを以前味わったことがあった。海底トンネルである。全身が完全に海中にいてもそれは同じであり、良く見れば一直線に道が続いているのがわかる。それを見た雫は安心して亀に付いていくのだった。



亀に付いていくこと十数分。漸く目的地が見えてきた。それは海の中に君臨する城のようであった。


「立派な建物です。こんな場所にこんなのが在るなんて思わなかったです。」

「そうですか。驚いてもらえるとこちらも招待した甲斐があります。ここが私たちの住まい、『竜宮城』であります。」

「りゅうぐうじょう。龍ですか。なら鉄ちゃんみたいなのがいるかもしれないですね。」


この時、というよりも亀を助けた時点で普通なら気付く筈なのだが、幸か不幸か雫はこのフィールドのオリジナルのストーリーを知らなかった。小さい頃から親は仕事が忙しく、読書好きで小さい頃から難しい本ばかり読んでいた為か簡単な童話などを読んでかなかったのだった。

そのため雄大な海の城『竜宮城』を純粋な心持ちで堪能することができたのはやはり幸運だったのかもしれない。


竜宮城の中に入ると大きな宴会場のような場所に通される。

その部屋は豪華できらびやかな飾りがふんだんに施されていた。そして海中に住む動物たちが雫たちを出迎え、盛大にもてなしてくれるのだった。

魚たちは綺麗な舞を披露してくれ、それに合わせて半人半魚、いわゆるマーメイドと呼ばれる者たちが料理などを運んで来てくれる。そこはまさに楽園であった。


「凄いです。凄いです。龍らしきものは全く見掛けないですけど楽しいです。」

「~ぉ~ぉ~♪」


雫は竜宮城をとても気に入った様子であったし、シロやアンフェに至っては魚たちと一緒になって踊り出す程であった。しかし、そんな能天気なのとは違ってわんこと鉄ちゃんは違和感を覚えていた。

それはたかが亀を一匹助けたくらいのもてなしではないという点であった。もしこれ程のもてなしを受けるくらい、この城にとってあの亀が重要な存在ならば一匹で浜辺にいたのは不自然だと二人は考えるのだった。

また雫たちは気付いていないのか、気付いているのにその態度なのかはわからないが、魚たちの中にはモンスターも数体混じっている。


「わんこに鉄ちゃん。なに隅っこにいるですか。折角なんですし楽しむです。」


やはり雫はこの事態に気付いてはいないのだろう。それを確認した二人は警戒を怠らない範疇で楽しむことを決めた。


そんなこんなで宴会場で夢のような一時を過ごした雫は、気がつくとそろそろログアウトする時間帯に近付いていることに気が付く。その旨を連れてきてもらった亀に伝える。すると亀は、


「そうですか。もう帰られてしまうのですね。それなら最後に我らのそしてこの城の主人であらせられる乙姫様よりあなたに贈り物がございます。」


と亀が言うと奥からとても美しい女性が近付いてくる。周りに仕えるマーメイドの美しさでは比較にならないほどの美しさを持つ女性が乙姫であることには、鈍い雫も流石に気が付くのだった。


「あなたは我々の同胞を助けてくださった。本当にありがとうございました。そして我々の同胞に善行をしてくださった方にはこの竜宮城にお招きし、これをお渡しする決まりとなっております。」

「何ですかこれ。」

「玉手箱と呼ばれる代物です。」


乙姫が雫に手渡したのは見た感じ、少し豪華な箱であった。


「玉手箱ですか。中に何か入ってるですか?」

「ええ。しかしその玉手箱は決して開けないでください。」

「え、何でですか。それならこんな箱、渡さなきゃいいじゃないですか。」

「しかしそういう決まりですので。」

「面倒です。まあ開けるなって言われるなら開けないです。それじゃあまたなで、あっ」


と雫が帰ろうと後ろに重心をずらした瞬間、直ぐ後ろにいたわんこにぶつかりバランスを崩し、転倒しそうになる。


「わんわん」

「っと。危なかったです。ありがとうわんこ。ってアレ箱は?」


雫が転ぶのはわんこがフォローしたが、バランスを崩した拍子に手放していた玉手箱はどうしようもならず、床に落ちてしまった。しかもその拍子に箱の蓋が取れてしまったようで箱の中から白い煙がモクモクと立ち昇った。乙姫に向かって。


「ちょっとやだ、やめ、ヤバイ。」


乙姫は煙を振り払おうと必死に抵抗するが虚しく空を切るのであった。そして箱から煙が出なくなり乙姫の姿が見えるようになると、驚いたことに先ほどまであんなに美しかった乙姫がシワだらけの老婆へと姿を変えてしまっていた。

乙姫は自分のヨボヨボになってしまった体を確認し、鬼のような形相を浮かべた。


「な、何てことをしてくれたのこの野蛮人。しかし私の計画を台無しにしただけでなく、私をこんなみすぼらしい姿に変えやがって。」


そこには姿だけでなく性格まで豹変した乙姫様が立っていた。



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