これより先は
雫の放った特製キノコは聖属性の塊であった聖神ラフィエルを喰らい尽くし満足したのか、増殖を止め宿主を失ったため行動自体を停止させ地面に落ちていった。仮にもこの聖の権現のようなフィールドのボスであったラフィエルのほぼ全てを喰らったキノコたちは、抑えきれんばかりに光輝いているのだった。
「ふぅー。良かったです。なんとか『聖なる』シリーズの1つで倒しきれたです。あれで無理なら最悪『禍々』の中のどれかを使わなくちゃならんかったです。アレ見た目が悪いですからあんまり見たくねぇーです。まあ作ったの私ですけど。」
と雫がまだ可愛いげのあるアイテムまでで倒せたことにほっとして独り言を喋っていると、光輝いているキノコに釣られたのかアンフェが近づいていってしまう。
「やめろですアンフェ。私とかわんこみたいに聖属性に関係ない奴ならともかくいくら増殖が止まってても危ないです。」
とアンフェに警告を出すが、アンフェは止まらない。キノコの前にふわふわと漂いながら手を翳す。そして雫には魔法などのゲームの機能の殆どが分からないため、今アンフェが何をしているのか理解できていないがキノコの光がどんどんアンフェの方に移っていくのだけわかった。
光の回収を終えたアンフェはすぐに戻ってきて雫の頭の上に乗っかりうとうとしだすのだった。これは今までの経験で進化関連だろうとあたりをつけた雫は、アンフェを頭に乗せたまま先に進むことに決めた。しかし、
「あれ?なんか何時もみたいな進む道が見当たらねぇです。ってわ!」
雫がキョロキョロと先に進むための道を探していると突然、雫の目の前に文字が浮かんだ。クエストの受諾やボス戦後などによく目にする光景だが突然のことについ驚いてしまう未だに少しゲームに慣れきってはいない雫であった。
そんな事は置いておいてその目の前の文字の内容は概ね、ここから先の街やフィールドにはまだ行けないらしかった。
「進めないですか。もしかして他の街とかフィールドに何かあるかもしれないですね。折角ですし最初の街から色々と回ってみるのも面白いかもしれないです。」
雫の攻略にはかなりのバラつきがあり好んだ街やフィールドは徹底的に調べたり探索するのに対して、苦手な場所はさっさと行ってしまうことも少なくない。今回の第9のの街などは顕著である。そのためまだまだ雫の行ったことのない場所はゲーム内に沢山ある。そのため調度いい機会にそれらを探してみようと考えたのであった。
本当は雫の攻略が運営サイドの予測よりも速く追加実装が間に合わなかっただけなのであるが、雫は前向きに捉えるのであった。
そうやって雫が今後の方針について考えていると頭の上で進化を行っていたアンフェが再起動しだす。頭の上から雫の目の前に顕現したアンフェの身体は今までよりも少し大きくなっていたが、それよりも顕著に変化が現れていたのはアンフェの背中にあった。今まで背中についていた羽は妖精の、といった感じの可愛らしいモノであったが進化したアンフェの羽は何と言うか、まさに天使の羽のように純白の綺麗なモノであった。
姿や格好も天使の象徴的な光の輪は無いものの、天使のように神々しくかわいいものであった。
「いいですね。かわいいですよアンフェ。」
「ぁ~~ぅ~♪」




