二度目の対戦
次の日、雫たちはもう一度第9のフィールドボスである聖神ラフィエルのいる場所にやって来ていた。一度目の対戦では圧倒的に相手の情報が不足していたことと、久し振りに鉄ちゃんの防御が崩されるという事態に動揺して撤退を強いられたが今回はしっかりと作戦を練ってきているのだった。
「また来たか愚かなる下等生物どもよ。再び敗走するために参るとは貴様らも殊勝なことよ。その行為に免じて我も我の僕も全力で相手をしてやろう。『神撃』」
二度目のボス戦もこの攻撃により開幕となる。この『神撃』は鉄ちゃんの防御で防げることが分かっているので雫たちは全く気にせず行動を開始する。
まず始めに動いたのはアンフェとシロである。アンフェは神聖魔法を用いて雫の防御を固めていく。『守護結界』と『身代り盾』を並列詠唱を使い雫に施していく。守護結界で常時の防御力を底上げし、身代り盾で死に直結する攻撃を1度だけ防ぐ。
とはいえ雫の紙装甲ではこのクラスのモンスターの攻撃は通常攻撃でも致命傷になりかねないのだか。と言うか底上げする防御力を雫が有しているのかは不明だがそこはご愛嬌という感じである。
そして今回は、というよりも大抵の場合相手の主力の周り、今回で言うところの神の僕を相手取る役割のシロは魔法と妖術、仙術の併用という離れ業を披露する。
「なんと。これは『凍霧』いやこの規模の天候掌握系の魔法ということを考えると『雪ふらし』か。ふんそのような子供騙し、我はおろか我の僕にすら効きはしな…なに」
「どうしたのですかラフィエル様。」
「厄介な。お前たち全力であの妖狐を潰せ。これを発動され続けるのは面倒だ。」
「まあ待つです聖神さん。前は私たちが食らったんですからそっちも食らっていくです。シロ。」
「コーン。」
シロが術の発動を完了させる。すると突然上空に雲が現れる。それはシロが雪を降らすときによく見る光景であった。しかし今回はひと味違う。この術の名は『氷槍凍雨』氷の槍がラフィエルを基準に空から無数に降り注ぎ始める。
「ラフィエル様。この程度の氷槍がいくら降り注いでこようとも我らにはラフィエル様より授かったこの剣がございます。これにより容易く。」
神の僕の1体が自身の持つ剣で氷槍を斬る。すると氷槍はいとも容易く崩れ去る。これを見た神の僕たちは剣で槍を防ごうとする。しかしシロの術はそう甘くない。剣により粉々にされた氷槍は一瞬空中に舞ったと思ったら空中にある水分を冷やし始め、周りの生物もろとも凍りつかせる。
この氷槍は突き刺さった対象を体の芯から凍りつかせる。これは雪魔法の『氷槍』の効果であり、妖術を行使することで規模を拡大し、仙術により、破壊され空中に飛来し、術者の手を離れた魔法を行使し続けることを可能としていた。
「止めろ馬鹿どもが。それは魔法が付与された氷槍だ。破壊せず回避せよ。でなければ凍結させられるだけだ。」
ラフィエルの怒号が戦場に轟く。それを聞いた者たちがいち早く氷の槍の回避を始める。しかしそれを見ていた雫がニヤリと笑みを浮かべる。
「回避しろですか。それをさせると思ったですか聖神さん。」
「何を言っておるか下等な人族の娘よ。ここにいるのは我の僕たちだぞ。この程度の攻撃は避けられて当然だ。それが分からぬのだから貴様らは下等生物なのだ。」
「攻撃がその槍だけなら避けれるかもしれないです。けどそんなに甘くはないんです。」
その雫の言葉通り神の僕たちは回避に失敗し始め、聖神ラフィエルの周りを囲んでいた多数の僕たちが、どんどん凍らせれていく。
よく見るとしっかりと回避しているはずなのに突然氷と化している者もいた。
これは神聖魔法を掛け終えたアンフェが幻惑魔法の『不可視化』で本物の氷槍を消し、とある準備をしていたわんこが影魔法の『影分身』で偽物を作ったわんこ、シロ、アンフェの3人の併せ技であった。
「幻惑の類いか。ならば術者を殺しこれ自体を止めさせればっ、『護ノ防壁』」
そしてそれをさせまいとわんこが影から奇襲をする。しかし死角からの攻撃を咄嗟に防いだラフィエルもさすがである。
しかしそうこうしているうちに神の僕のほとんどが氷付けにされてしまった。しかしラフィエルはまだ余裕の表情でこう言う。
「我は聖神ラフィエル。我にかかればこのような状態異常は直ちに直してくれよう。」
「だから何度も言わせんなです。それをさせるわけはねぇです。ていっ。」
「な、くそ。『護ノ防壁』」
そう言いながら雫はお決まりのボムを投げつける。
ドゴーーーーーーーーン
爆発により巻き上がった爆煙が晴れると神の僕はまだ氷付けにされていなかった数名を残して粉々になってしまっていた。ただでさえ威力の可笑しい雫のボムを衝撃に弱い脆い体で受けきれるわけがなかったのだ。
雫は術の行使を終えへとへとになっているシロを撫でながら言う。
「大分鬱陶しい奴等も消えてここもスッキリしたです。聖神さん?」
「貴様。先程から少し我の僕を減らせたからと図に乗りおって。貴様らの攻撃程度では我に傷すらつけられないことを教えてくれるわ。」
ボス戦は第2ラウンドに突入する。




