スルーする狂信者
ヒーとクーによって剣を使えない状態にされた狂信者BとCは雫によって止めを刺された。剣士が剣を失ってしまい為す術なくなってしまったい呆然としているところを最後は銃弾が貫いたのだった。
そして彼女らが率いていたモンスターたちも鉄ちゃんやシロによってその数をずいぶんと減らされていた。シロには通常のモンスターの攻撃を避けるのは簡単である。
しかも、もし直撃してしまっても鉄ちゃんの霊亀の首飾りの効果により、シロの受けた攻撃は鉄ちゃんにより肩代わりするためほぼ無傷。第9のフィールドのモンスターといえど、鉄ちゃんの防御を通常攻撃で貫通できる実力を持っているモンスターは中々いない。しかもそのような攻撃をしてくるモンスターは優先的に『鉄龍砲』で狩られていた。
雫たちはヒーとクーを構い始め戦闘をほったらかしにして、鉄ちゃんとシロが殲滅戦の弱い者虐めに入った頃、わんこと狂信者Aの戦いも盛り上がってきていた。
「哀れな狼の子よ。貴方の過ちはこの神の庭を土足で踏み荒らした彼女を貴方の主人としたことです。悔い改めなさい。」
「くぅーん?」
「……、やはり愚かな主人の下には愚かな家来が募るものですわね。」
「わんわん。」
「そうですか。ならば過ちを認め断罪されよ。」
最初の台詞には首をかしげたわんこであったが、次の言葉はその通りだとばかりに首を縦にふる。しかし何を勘違いしたか得意気に斬りかかってくる。
それをわんこはするりと躱しながら、口に咥えた火龍の騎士シリーズの火龍剣。この戦闘では得意の影を使用せず、剣術のみで戦っていた。わんこがそんな戦闘を繰り広げているのには時間稼ぎ的な思惑があった。わんこが戦闘中に気が付いたことだが、ここは中ボスゾーンという事なのかアンフェの『人気者』による追加の援軍が出現してこないようであり、特に注意するような特殊な攻撃をするものもいないため休憩地としては最適な場所に感じたのだった。
「ほらほら。どうしたのですか狼の子よ。さっさと私の断罪の剣をその身に受けなさい。」
「わんわん」
狂信者の大剣の二刀流という邪流、極まりない変則的な剣術を軽やかに避け続けるわんこ。狂信者の女性の呼吸は徐々に乱れ始めていくがわんこはまだまだ余裕がある。
わんこにとって何よりも脅威になりうる攻撃は護衛が難しい遠距離の必中攻撃のような雫が得意とする攻撃であり、逆に攻撃の間合いが決まっている剣での攻撃は安心できるのだ。
「はぁー、はぁっ中々やり、ますね。ふぅ。しかし神の使徒である私の攻撃を避けることは、それ自体が神への、冒涜となるということをまだわかりませんか。それならば神に授かりしこの剣技の奥義をその身にくらいなさい。」
「わんわん」
そう言った理由によりいくら神様直伝の奥義であろうが、結局間合いが限定的である剣術を用いてわんこを捉えるには彼女の技術ではどうしようもなく、かといってこれ以上の術はない彼女ではしょうがないのであった。
その頃、というとシロによって局地的な大吹雪に見舞われていおり機動力の低下を余儀なくされているモンスターたちが鉄ちゃんとの殴りあいを強いられている頃、雫はアンフェが張った聖結界の中で、ヒーとクーで遊んでいた。
と言うのもヒーとクーの関係性に注目した雫は、この放熱と求熱が何か別のことにいかせないかを考えている。と言うのは雫の言で実際はヒーとクーをわちゃわちゃして楽しんでいるのであった。まあいつも通りである。
その後、頃合いを見てアンフェの合図を受けたわんこが狂信者Aを片付け雫的には難なく中ボスを撃破するのだった。




