現れた狂信者ども
第9のフィールドの攻略も徐々に慣れてきた雫たちはサクサクと先に進んでいった。しかし中盤を越えたくらいまでのここまでの戦闘によりまぐたんのHPもかなり減少してしまっており、またはくたくも雫の腕の中にいつまでもだっこしておける状況ではなくなってきたのでチェンジすることにした。
現在召喚されてるのは、ヒーとクーの二人であった。こいつらは8人組の中でも大の仲良しのペアであり一緒に召喚されると基本的にじゃれあっていた。
真っ赤な体を持つヒーは、太陽のように赤く輝いている金属。ヒイロカネを食したためか周囲から取り込んだ熱を自分の意思とは別に増幅し、放出してしまう体質を持っており、常時体温が高く下手すれば自身の体すら溶解してしまいかねないという厄介な特性を持っている。
一方のクーはヒーとは逆に冷気を纏っており青みがかった体色をしている。こちらは架空鉱物のアイスマグマと呼ばれる鉱物によって進化したのだ。この鉱物は氷龍王のブレスによって凍りつかされたマグマが元のマグマに戻るため、熱を求めて周囲から熱を奪うと言い伝えられておる伝説の鉱物であり、そのため二人の相性はとても良いのであったが、
「いまいち小鉄たちの進化に関係した素材のあれが分からんです。まあ私がある程度知ってる金属なんて鉄とか金、銀、銅とかくらいですし。まあしょうがねぇーですけど。」
「わんわん」
今まではファンタジーに出てくるような架空のアイテムや素材などに興味など無く、「わかんねぇーです。」の一言で片付けていた雫であったが、仲間のことであるからか多少の興味を持ていた。まあ知識は伴っていないが。
そんなこんなでヒーとクーを連れて第9のフィールドを闊歩していると、今までに出てきたモンスターとは異なった風貌の敵が現れた。
雫よりも身長の高い女性たちと今までに出現してきたモンスターの群れとそれをまとめ上げているように見えるボス。彼女らを見つけた瞬間雫は、皆に指示をだす。
「アンフェは回復と補助を頼むです。鉄ちゃんとシロはモンスターの方をヒーとクーは私を守ってくれです。でわんこはあの女の人を頼むです。三人いるですけど真ん中のは別格ぽいですから気を付けるです。」
その会話を聞いてかどうか分からないが、雫が警戒している女性が雫に向かって話しかけてくる。
「貴方たちですか、我らが神の庭を荒らして回っているという輩は。そんな無礼者どもは私たち神の使徒が全て掃除してしまわなければなりません。貴方がたには我らが神の偉大さをもっと説かなくては…」
「よし、わんこたち行くです。」
「って話は最後までちゃんと聞きなさい!
っとこれは影魔法?いや闇夜魔法か。なんと不浄な、私が浄化してあげましょう。」
三人の使徒の内のリーダーっぽい役の女性がわんこと交戦を始め、他の二人は雫たちのところに向かってくる。リーダーは大きな大剣を二刀流で振り回しているが他の二人はそんな意味不明な戦闘スタイルではなくオーソドックスな剣士のようで雫たちに斬りかかってくる。
「ヒー、クー援護するですから、一体ずつ頼むです。」
「ガブガブガブ」
「ギュー、ギュッ」
ヒーとクーは斬りかかってくる使徒たちの前に立ちはだかる。しかし使徒たちは自分の半分ほどの体躯のヒーたちを見て嘲笑を浮かべる。
「退きなさい。小さく愚かな竜の子よ。退かぬと言うならば我らが今から貴方の主人と一緒に浄化して差し上げよう。っは。」
クーの方は使徒の斬撃を辛うじて避ける。
しかしヒーはもう一人の使徒の剣をもろに受けてどうか吹き飛ばされる。使徒は勝ち誇った顔をするがヒーは直ぐに体制を立て直し使徒に飛びかかる。しかし使徒はヒーの攻撃を見事に去なし剣により追撃をしていく。
「ふふ、哀れな竜の子よ。貴方の健気な攻撃は全て、そう全て無駄な足掻きなのです。さっさと降伏をすることを、っん?」
勝ち誇ったまま剣をヒーに向けた使徒はある違和感に直面する。それは自分の握っている剣のことであった。その剣はもはや原型をとどめていないほどボロボロになっていた。
これはヒーのスキル『熱装甲』による武器破壊付属の攻撃による効果であった。ヒーの近付くだけで熱い体を何度も剣で触れてしまったら当然武器は使えなくなるだろう。
これで剣士が剣を失った状態となる。慌てて使徒はもう一人の使徒に助けを求めようとする。しかしもう一人の使徒も立っているのがやっとなほど疲弊している。一見すると全く外傷が無いのにだ。
それはクーのスキル『求熱』の効果であった。このスキルは文字通り周囲から熱を求める常時発動型のスキルであり無機物には効果が無いが、生物の体温をどんどんと奪っていき行動不能とする凶悪なスキルであった。
「さすがヒーにクー。バッチリと敵二人を無力化に成功です。後でマグマボールとスノーボールをやるです。」
「ガブガブガブ」
「ギュー、ギュッ」
剣がボロボロになった使徒に魔法銃を向けながらヒーとクーを労う雫であった。
ヒー。
ヒイロカネを食べて進化した。周囲の熱を増幅し放出することができるため常に暑がっている。クーがいると普通の平熱のままでいられるため好いている。結構やんちゃな男の子
クー。
アイスマグマとい本作のオリジナル鉱物を食べて進化した。氷タイプなのに熱が大好きな変な子。人懐っこくちょっぴり天然な女の子。




