ハロウィーンの仮装
現実でもハロウィーンが迫ってきている今日この頃、雫たちはいつもとは全く変わった珍しい装いであった。雫がこのゲームを始めてからほとんどを「知識の到達者」というシリーズの装備で研究者のような格好で過ごしていたが、今回は、ハロウィーンイベント限定でNPC運営の露天などで販売されていた装備を身に付けているのだった。
それらは一応、装備ではあるのだがハロウィーン特有の仮装をイメージしているため大掛かりなものになると、ほとんどモンスターと同じような格好で街を彷徨いているプレイヤーもいるのだった。
そんな中、雫の仮装は魔女をイメージした格好であった。通常の魔法使い等の装備よりも装飾が多く見た目に拘っているようであった。だが雫の幼い容姿のせいで魔女と言うよりも、魔女っ子という表現の方が合っていたがそれを雫に伝える者は、その場にはおらず雫は自分の格好に満足しているのだった。
「ふふふ、いつもはしない格好ですからね。なかなか新鮮で楽しいです。この魔女の衣装もいいです。妖艶な感じが出てる気がするです。ねぇわんこ。わんこたちも良い感じです。」
「くぅん。」
「コーンコーン。」
「~♪~♪~」
雫の回りを囲むわんこと鉄ちゃんは、雫とは異なり装備はそのままでワンポイントのアイテムとしてカボチャの帽子などを着けていた。そしてシロとアンフェはしっかり仮装をしており、満足げな様子なのであった。
ただ残念なことにこの装備はゲームを始めたばかりの初心者でも買える値段設定にしてあるため性能はそれなりなので、この装備でフィールドに出るプレイヤーはあまりいないのだ。しかしそこは雫。そんな事お構い無しにいつも通りフィールドに向かってしまうのだった。
「よくわかんねぇーですけどこの魔女の装備品に箒があるですからね。この箒でモンスターを殴り倒してやるです。」
ただ魔法を覚えていない雫の攻撃方法は魔女とは思えないものになりそうであった。
結局、雫の魔女っ子箒アタックは敵モンスターに1ダメージも与えることなく終わり、いつも以上にわんこたちのフォローが冴え渡る結果となった。だがしかし雫はこのイベントを満喫した様子であるのだった。
ハロウィーンイベントはまだ続いているが雫の中では一段落した次の日、雫は小枝や鈴たちとおしゃべりを楽しんでいた。
「やっぱりあの格好じゃあ大したことは出来なかったですね。まあ楽しかったですけど。」
「は、はは。というか魔女装備の箒というか魔女装備は確か大体がINTを高める効果しかないから物理ダメージはそりゃはいらないよ。と言うかあの装備でまともにプレイできるのがさすがと言うか…」
「…さすが。」
「まあしずちゃんが凄いのは今更かな?それよりもハロウィーンイベントと言えば、フィールドにジャックオーランタンがレアモンスターとして出現したんだって。何でもそのドロップアイテムが中々の代物だったらしくてね。私もフィールド回ってみようかな?」
「へー。そうなんですか。全く見なかったですね。残念です。」
「あっ、しずちゃんは出会ってないんだね。」
いつもは持ち前の豪運とアンフェの『人気者』によってモンスターやイベントが雫の方に寄ってくるように発言するのだが、ことイベントに関しては雫も調子が振るわないのか、それを聞いた小枝も、少しほっとするのだった。




